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肝 その他2

タイトル P-233:

当院における肝膿瘍の起因菌・治療の現状

演者 岩下 ちひろ(自治医科大学消化器・肝臓内科)
共同演者 大竹 俊哉(自治医科大学消化器・肝臓内科), 渡邉 俊司(自治医科大学消化器・肝臓内科), 宮田 なつ実(自治医科大学消化器・肝臓内科), 森本 直樹(自治医科大学消化器・肝臓内科), 長嶺 伸彦(自治医科大学消化器・肝臓内科), 礒田 憲夫(自治医科大学消化器・肝臓内科), 菅野 健太郎(自治医科大学消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】従来,肝膿瘍は消化管や胆道系の感染症性疾患が原因となり形成されるため,起因菌としてはE.coliが最多,また治療に関しては,適切な抗菌薬の投与とともに可能な限り膿瘍ドレナージを併用することが良いとされてきた.しかし当院で経験した肝膿瘍症例においては,起因菌としてKlebsiella pneumoniaeが最多であり,また膿瘍ドレナージを併用せずとも保存的加療のみにて良好な経過が得られている症例が多数見られた.そこで今回,これまでに当院において経験された肝膿瘍症例につき,その起因菌や治療法の動向につき検証.これらの結果を既報の報告と比較し,今後の肝膿瘍診療のあり方につき検討した.【方法】2006年1月から2013年4月までに当院で加療を行った肝膿瘍患者48例を検証の対象とし,レトロスペクティブに検証した.【結果】対象の平均年齢は66.9歳.起因菌としてはKlebsiella pneumoniaeが15例(31%)と最多で,E.coliは2例(4%)のみ.また膿瘍ドレナージを施行した症例は14例(30%),アスピレーションのみが13例(27%),保存的治療(抗菌薬のみ)が21例(43%)であった.死亡退院は悪性疾患に肝膿瘍が合併した1例(起因菌不明・保存的治療)のみであり,他は全例,いづれかの治療が奏功し改善,退院していた.【結論】近年,東アジアにおいて,肝膿瘍の起因菌としてKlebsiella pneumoniaeが増加しているとの報告が多数見られる.当院における約7年の経験でも肝膿瘍の起因菌として,Klebsiella pneumoniaeが31%と最多で,従来多いとされていたE. coli等よりはるかに多い結果であった.また起因菌がKlebsiella pneumoniaeであった症例においては,糖尿病の合併,アルコール常用者が多い傾向が認められた.治療においては,半数近くでドレナージなしでも良好な経過が得られており,肝膿瘍治療においては,早期診断,適切かつ速やかな抗菌薬投与開始が膿瘍ドレナージと同等,もしくはそれ以上に重要性を持つものと考えられた.
索引用語