セッション情報 ポスター

HBV

タイトル P-238:

核酸アナログ治療において困難が生じた慢性B型肝炎の2症例

演者 光井 洋(東京逓信病院消化器科)
共同演者 関川 憲一郎(東京逓信病院消化器科), 小林 克也(東京逓信病院消化器科), 大久保 政雄(東京逓信病院消化器科), 田顔 夫佑樹(東京逓信病院消化器科), 水谷 浩哉(東京逓信病院消化器科), 橋本 直明(東京逓信病院消化器科)
抄録 【はじめに】核酸アナログ(NA)治療により慢性B型肝炎の活動性がコントロールされる症例が増え,長期予後の改善が期待される.しかし,まれにNA治療の過程で,ガイドラインによる対応に困難が生じる場合がある.我々は,エンテカビル(ETV)耐性でbreakthrough肝炎が生じた例と副作用の腎障害のためにアデフォビル(ADV)が中止となった症例を経験した.【症例1】57歳男性.HBVの非活動性キャリアであったが,2009年の健診でトランスアミナーゼ(TA)上昇を認め当科へ紹介された.HBeAg陽性でHBVDNA>9.1(logcopy/ml)と高値.AST/ALT 239/336(IU/l)と活動性高く,ETV 0.5 mg投与を開始.7か月後にTAは正常化したが,HBVDNA減少は3.1までだった.ETV開始30か月後からHBVDNAが増加し,その6か月後にbreakthrough肝炎を認めた.HBVのNA耐性については,202番アミノ酸(AA)にETVの,また180,204AAにラミブジン(LAM)の各耐性変異が見られた.耐性変異のないADVをETVに併用投与したところ,4か月後にTAは正常化し,HBVDNAも3.0に減少した.【症例2】52歳男性.2003年ころよりTA上昇を認めて慢性B型肝炎と診断され,翌年LAMを導入された.しかし8か月後に耐性を生じ,ADVを併用.その3年後に血清クレアチニン(Cr)が上昇したため,ADVは隔日投与となり,翌2009年に当科に紹介された.TA正常,HBVDNA 4程度で安定していたが,2年後にCr上昇あり.ADV投与を3~5日毎1Tに減量しCrは低下したが,HBVDNAは7台に増加した.ADVの継続は困難と判断し,ETV単独投与(1mg)に変更した.HBeAgとともにHBVDNAも減少し,現在5程度.HBVのNA耐性については,173,180,204AAにLAM耐性変異を認めたが,ADV,ETV耐性変異は存在しなかった.【結論】ETVは耐性が生じにくいNAであるが,耐性が起きた場合の治療選択は非常に限られる.またLAMと併用例でのADV不耐例の対処も,ガイドライン上難しい.今後は,新たな抗HBV用NAの早期使用承認が望まれる.
索引用語