抄録 |
【目的】腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LC)の術後に内視鏡的処置を施行した症例について検討した.【対象】平成17年1月から平成25年8月までの8年8ヶ月間に施行したLC 594例のうち,術後30日以内に内視鏡的処置(Clavien-Dindo分類のGrade 3aに相当)を施行した5症例.【結果】術後に胆管結石が判明し,内視鏡的切石術を施行した症例が2例.術後胆汁瘻に対して内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(以下ENBD)を施行した症例が3例であった.消化管疾患に関連した内視鏡的処置は無かった.女性4例,男性1例で,年齢は40~80歳であった.原疾患は胆嚢結石3例,胆嚢腺筋腫症1例,無石性胆嚢炎1例であった.5症例のうち,経皮経肝胆嚢ドレナージ(以下PTGBD)を施行した症例が3例で,全例が中等症以上の急性胆嚢炎であった.PTGBD未施行の症例では術中所見で胆嚢頚部に高度の炎症を認めた.また,手術時間は60~196分(平均112分)であった.【結語】LC後に逆行性胆道造影の処置が必要な症例は術後胆汁瘻の一部や落下結石が考えられる.今回の検討では炎症が強い症例で上記のような処置が必要となることが多かった.また,術後の日が浅いときに処置をするために,十分にできないこともある.落下結石の症例も,手術直後の症例はENBD留置までとして,後日に内視鏡的切石術術を行った.落下結石の診断には,術中胆道造影が有用であるが,必須の手技でなく全例で行っていない.また,術中に診断がついても腹腔鏡下に胆管結石摘出手術を施行できる施設は少ないために,開腹術に移行するか,術後に内視鏡的処置に委ねられることが多い.また,術後胆汁瘻は当科での発生は10例(1.7%)であり,手術中に留置したドレーンの管理で治癒することが多い.そのために本当にENBD留置が必要になる症例は少ないと考えられる.患者に過不足ない診断や処置を目指し,個々の症例に合わせた術後合併症の治療の戦略を立てることが重要と考えられた. |