セッション情報 ポスター

症例胃癌4

タイトル P-284:

除菌時代に残された4型スキルス胃癌の年次的検討

演者 加藤 俊幸(新潟県立がんセンター新潟病院内科)
共同演者 佐々木 俊哉(新潟県立がんセンター新潟病院内科), 青柳 智也(新潟県立がんセンター新潟病院内科), 栗田 聡(新潟県立がんセンター新潟病院内科), 船越 和博(新潟県立がんセンター新潟病院内科), 成澤 林太郎(新潟県立がんセンター新潟病院内科)
抄録 【目的】H.pylori感染と発癌機序の解明が進むなかで,スキルス胃癌との関連はまだ不明の点が多い.感染率の低下と除菌の普及に伴って4型スキルス胃癌の頻度は減少しているのか,年次的に変貌しているのかを検討した.
【対象と方法】1990年から22年間の4型胃癌430例を対象として,臨床病理学的に年次的な変化を検討した.
【成績】22年間の胃癌切除7,629例のうち4型胃癌は430例5.9%であった.内視鏡切除を除く外科切除例における頻度は22.1%から徐々に減少し,この10年間では6.8%である.しかし,早期癌が増加する一方で,4型胃癌の患者数そのものはわずかな減少にとどまり,進行癌の17.7%を占めている.4型胃癌の男女別頻度は,男性では6.6%(257/3,890),女性では9.7%(173/1,791)で女性に多いが,この10年間では女性に減少傾向がみられ,女性の割合が44.0%から35.2%へ減少している.平均年齢は男性64.3歳,女性61.7歳で,胃癌全体に比べ女性では2.4歳若かった.49歳以下の若年者は16.3%で,男性で12.4%,女性では22.0%を占めるが,49歳以下の若年者が占める割合は年々減少し,とくに39歳以下は5.0%,4.9%,6.9%,3.9%となり,H.pylori感染率減少の影響と考えられる.しかし,早期診断が進み若年者の感染率が低下した除菌時代になっても進行癌のなかで4型胃癌の実数が減少していないのは問題である.若年者への除菌を推進する一方,4型スキルス胃癌では菌株や性差の検討とともに遺伝因子として胃癌の家族歴が注目される.49歳未満の若い進行胃癌は,両親が胃癌になった家族歴が重要で,H.pylori感染と両親に胃癌になった家族歴の両方を有する女性ではとくに注意が必要である.
【結論】4型スキルス胃癌の胃癌切除例における比率は早期癌の増加に比べてわずかな減少にとどまっている.39歳以下の女性では感染率低下とともに4型胃癌は減少しているが,両親に胃癌家族歴のある女性では除菌と若い時からの内視鏡検診が必要である.
索引用語