セッション情報 ポスター

小腸 症例(腫瘍)

タイトル P-310:

鋸歯状病変を伴うCrohn病に回腸癌を併発した1例(第2報)

演者 秋元 直彦(獨協医科大学病理学(人体分子))
共同演者 岡本 陽祐(獨協医科大学病理学(人体分子)), 小林 俊介(獨協医科大学病理学(人体分子)), 岡本 健太郎(獨協医科大学病理学(人体分子)), 市川 一仁(獨協医科大学病理学(人体分子)), 冨田 茂樹(獨協医科大学病理学(人体分子)), 内藤 善哉(日本医科大学統御機構病理学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学), 藤盛 孝博(獨協医科大学病理学(人体分子))
抄録 炎症性腸疾患の患者数は近年増加傾向にあり,それに伴いcolitic cancerの患者数の増加が危惧されている.潰瘍性大腸炎に関連したcolitic cancerは広く知られている一方,本邦におけるCrohn病の癌化症例は少数である.今回,我々は小腸型Crohn病発症から約10年の経過を得て,閉塞性イレウスを契機に回腸に癌が発見された症例を経験したので文献的な知見を交え報告する.症例は50歳代男性.10年前に小腸型Crohn病と診断され,外来で継続治療中であったが,回腸狭窄による閉塞性イレウスを発症し,イレウス解除目的に回腸部分切除が施行された.狭窄部では,高から中分化型の管状腺癌を主体とし浸潤部では低分化腺癌を伴っていた.また,軽度の脈管侵襲を認めた.最深部では漿膜面に癌が露出していた.上記病変の周囲にはdysplasiaや粘膜内癌を含む異型上皮を比較的広い範囲に伴い,鋸歯状構造を伴うdysplasiaを認めた.炎症性腸疾患の患者数は近年増加傾向にあり,それに伴いcolitic cancerの患者数も増加していくことが予想されている.Crohn病に合併するdysplasiaの形態学的分子生物学的な特徴を捉えることは今後の検討課題のひとつであろう.一般的に原発性小腸癌の早期診断は困難であるが,Crohn病に合併した小腸癌も同様であり,本例の様に高度狭窄をきたすことで外科手術後に診断される場合が多い.現在のところ本邦ではCrohn病の癌化症例の報告は少数であるが,Crohn病患者数自体は増加傾向にあり,今後増加が予想される癌化例への対応が必要である.
索引用語