セッション情報 ポスター

小腸 症例

タイトル P-315:

プレドニゾロンとオロパタジン塩酸塩の併用投与により外来治療が可能であった小腸アニサキス症の1例

演者 豊田 英樹(ハッピー胃腸クリニック)
共同演者
抄録 小腸アニサキス症はその重症例では緊急手術が必要なこともあるため,保存的治療の報告例の多くは入院治療を受けている.今回,プレドニゾロンとオロパタジン塩酸塩の併用投与により無理なく外来治療が可能であった小腸アニサキス症と考えられた1例を経験したため報告する.【症例】43歳,女性.夕食にしめ鯖を食べた夜に心窩部痛があったが翌朝には症状は軽快していた.摂食翌日,一緒にしめ鯖を食べた患者の兄が胃アニサキス症にて当院で内視鏡的に虫体を摘出した.摂食2日後から間欠的な強い腹痛が出現したため当院を受診.臍周囲に痛みと圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.腹部超音波検査(US)にて胃壁肥厚は認めなかったが,12cm程度にわたる小腸の限局的な壁肥厚(約9mm)と,その口側腸管の軽度拡張,ダグラス窩の腹水を認めた.肥厚した腸管の層構造は保たれ,第2層の肥厚が目立ものの典型的なcorn signは認めなかった.外来での限られた検査時間のこともありアニサキス虫体は描出できなかった.臨床経過とUS結果から,胃壁侵入を試みたアニサキスが小腸に流れて小腸アニサキスを発症したものと診断した.外来での治療を強く希望されたためプレドニゾロン5mg/日とオロパタジン塩酸塩10mg/日の投与を開始した.初回服薬時のみブチルスコポラミン1錠も追加して服薬されたが,服薬後から腹部違和感のみで腹痛は出現しなかった.摂食3日後および4日後にUSを施行し小腸壁肥厚の改善を確認した.アニサキスは7日程度体内で生きている可能性があること,たとえ死んでも虫体が腸壁内に残存することを考慮し,プレドニゾロン10日間,オロパタジン塩酸塩14日間を投与した.摂食14日後に施行したUSでは5cmにわたり小腸の片側性の壁肥厚を認めた.【結語】小腸アニサキス症にプレドニゾロンとオロパタジン塩酸塩の併用投与が有効である可能性が推測された.USにて早期診断し,速やかに治療開始することにより入院治療や手術が回避できる可能性が期待される.
索引用語