セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・肝臓学会合同)

遺伝性肝胆膵疾患の病態と治療

タイトル 消W17-11:

IPMN例の癌家族歴と家族性IPMN例の臨床的特徴

演者 松林 宏行(静岡がんセンター・内視鏡科)
共同演者 堀田 欣一(静岡がんセンター・内視鏡科), 小野 裕之(静岡がんセンター・内視鏡科)
抄録 【背景】第一度近親者に膵癌の家族歴を有する膵癌例は”家族性膵癌”と定義され, 膵癌全体の7~10%を占める.自験膵癌577例のcase-control studyでも, 膵癌家族歴はコントロール例の3%に対し膵癌例で7%と高く,家系内に膵癌が存在すると膵癌発生頻度が上昇する(Odd比:2.5, P = 0.002). 一方, IPMNは膵癌のハイリスク群であり, K-ras, p16など通常型膵癌と共通の癌関連遺伝子の関与がみられる. 海外では膵癌あるいはIPMNの家族歴を有するIPMN例を”家族性IPMN”と定義されているが, これらの臨床的特徴は明らかでない.【目的】IPMN例の癌家族歴を検討し, 膵癌家族歴のあるIPMNの特徴を明らかにする.【方法】1) 2002~2010年に当院を受診したIPMN397例(71±9歳, M:F=244:153)の癌家族歴(第一度近親者)を後ろ向きに検討した. 2) 膵癌家族歴のあるIPMN例の臨床的特徴を検討した.【成績】IPMN例の56%(221例)に家族の担癌歴を認めた. 癌種別では胃癌20%, 乳癌18%(女性のみの検討), 子宮癌14%, 大腸癌12%, 膵癌と肺癌8%, 肝癌が7%に認められた. 第一度近親者に2例以上の膵癌を有するIPMN症例はみられなかった. 膵癌家族歴をもつIPMN (家族性IPMN) 30例と膵癌家族歴をもたないIPMN(散発性IPMN)367例では, 男女比, 年齢, 喫煙歴および糖尿病歴に差を認めなかったが, 家族性例では散発性例に比して多発病変例(63% vs. 36%, P = 0.003)や主膵管型例(40% vs. 18%, P = 0.003)が高頻度にみられた.【結論】膵癌例と同様, IPMN例の第一度近親者にも膵癌の頻度が高く, IPMN例では近親者も含めたscreeningの重要性が示唆された. また, 膵癌家族歴を有するIPMN自体も悪性度が高いとされる主膵管型や多発病変例が多く, 慎重な経過観察および手術適応の検討を要すると考えられた.
索引用語 IPMN, 家族歴