セッション情報 ポスター

腸炎その他1 症例

タイトル P-329:

門脈ガス血症を来した虚血性上行横行結腸炎の1例

演者 山口 真彦(東京北社会保険病院外科)
共同演者 松下 公司(東京北社会保険病院外科), 頼木 領(東京北社会保険病院外科), 岡村 淳(東京北社会保険病院外科), 松野 成伸(東京北社会保険病院外科), 桑原 悠一(東京北社会保険病院外科), 細井 則人(東京北社会保険病院外科), 首藤 介伸(東京北社会保険病院外科), 天野 正弘(東京北社会保険病院外科), 住永 佳久(東京北社会保険病院外科)
抄録 症例は75歳,男性.昼食後より持続する腹痛,下痢,血便にて当院救急外来を受診した.下腹部正中の圧痛と粘血便を認めたが,高血糖など併存する糖尿病の所見以外に異常な検査所見はなかった.CTでは門脈内ガスがみられ,上行結腸,横行結腸の造影効果不良な浮腫状壁肥厚とともに静脈内ガスがみられたが,腹水,遊離ガス,動脈内血栓は指摘されなかった.上行,横行結腸腸管壊死の疑いで入院し,翌日CTで門脈ガスは消失したが,結腸壁の造影効果はさらに乏しく,浮腫性変化は強まり,腹水が出現してきたため,腸管穿孔を危惧し,緊急手術を行った.術中,少量の腹水とともに上行結腸の浮腫状変化を認め,虚血変化がみられない横行結腸と回腸末端を切除線として右半結腸切除を行った.病理組織では腸管壁の全層性出血,浮腫がみられ,腸管梗塞の所見であった.経過良好で術後12日目に退院した.退院後2週間目に水様下痢,腹痛にて再来院し,CTにて門脈内ガスが再出現,横行結腸からS状結腸まで壁が肥厚し,横行結腸の壁は一部菲薄化し造影効果が乏しく,その腹側腸間膜内にガスの貯留を認め,結腸壊死を疑われ入院した.絶食,頚静脈栄養,抗生剤投与の保存的治療を行い,黒色便が軽快し,入院後10日目のCTにて改善を認め,経口摂取を再開,17日目に退院した.門脈ガス血症は腸管の壊死,腸管内圧上昇,ガス産性菌の門脈内移行などによって発生する予後不良な病態とされるが,腸管虚血に起因する場合,早期の慎重な保存的治療で消失し,治癒可能な病態である可能性が示唆された.
索引用語