セッション情報 ポスター

大腸癌1

タイトル P-336:

低線量放射線の長期被曝がマウス大腸化学発がんに及ぼす影響(第1報)

演者 谷中 昭典(筑波大学医学医療系・日立社会連携教育研究センター)
共同演者 武藤 倫弘(国立がん研究センター・研究所・がん予防研究分野)
抄録 【目的】東日本大震災に伴い発生した原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.特に半減期の長い放射性セシウム(Cs137)はその後もほとんど減衰せず,土壌から河川を介して海洋中に移動しつつある.今後,原発の汚染水問題と合わせて魚介類の放射能汚染が深刻化するおそれが懸念される.厚生労働省は食品中に含まれる放射性物質の安全基準を100Bq/kg以下と設定しているが,低線量放射線が生体に及ぼす影響に関しては,傷害領域拡大作用(バイスタンダー効果),生体保護作用(ホルミシス効果)など,様々な仮説が提唱されており,一定の見解は得られていない.食品による内部被曝を直接受ける臓器は消化管であることから,我々は低線量放射線の長期被曝が大腸発がんに及ぼす影響についてマウスを用いて検討した.【方法】高濃度の放射性セシウム(Cs134+Cs137)を含有する土壌を茨城県内にて採取し,通常の餌に混入して放射性セシウム含有餌(100,300,1000 Bq/kg)を調製した.ICRマウス(6週齢の雄)に大腸発がん剤Azoxymethane(AOM)を投与後,通常の餌,あるいは各濃度の放射性セシウム含有餌をマウスに8~24週間摂食させた後,大腸粘膜のaberrant crypt foci(ACF),及び腫瘍の発生数,大腸粘膜組織所見,及び粘膜内8-OHdG量(酸化的DNA傷害の指標)を検討した.一部のマウスについては,AOMを投与せずに放射性セシウム含有餌のみを投与し,同一の検討を行った.【成績】給餌開始8週後の時点において,通常餌投与群と放射性セシウム含有餌投与群間に,大腸粘膜組織所見,AOM投与により発生するACF数について有意差は認められなかった.【結論】放射性セシウム(1000Bq/kg以下)8週間投与は,マウス大腸化学発がんに対して影響を及ぼさないことが示唆された.低線量放射線内部被曝のより長期的な影響について,現在検討中である.
索引用語