抄録 |
【はじめに】StageIV大腸がんの患者は全身状態などにより治療法が異なり,必ずしも手術症例になるとは限らない.さらに術式についても,切除術が予後を改善するとするエビデンスはいまだ示されてはいない.今回,日進月歩の集学的治療法をより外科治療に役立てる戦略を考察することを目的に,5年以上観察しえた手術症例の原発巣切除の有無による5年生存率の影響を調査した.【対象と方法】1989年1月から2008年12月までに当科で経験した大腸がん初回手術症例1395を対象とした.StageIV症例を原発巣の切除の有無で切除群と非切除群に分けて比較検討した.【結果】StageIV症例は202例(14%)で,切除群は150例(74%),非切除群は52例(26%)であった.年齢や占居部位に両群間に差なかったが,緊急手術例は切除群5%に対して非切除群15%と有意に多かった(p<0.05).非切除群において,バイパス術は右側に人工肛門造設術は左側と直腸がんに多く施行されていた.初回手術の癌遺残ではR0が施行されたのは切除群の6例のみであった.根治度Bであったのは切除群と非切除群それぞれ16%,2%で,切除群で有意に多かった(p<0.05).5年生存率も切除群で有意に良好であった(p<0.05).【結語】5年以上の長期生存は切除群のみにみられ,初回手術時に原発巣を切除することが予後改善につながる可能性が示唆された.今後は,全身状態やQOLの改善や安定化を考慮し,化学療法,放射線療法そして外科手術(原発巣切除,転移巣切除)を組み合わせていく戦略が必要であろう. |