セッション情報 ポスター

大腸癌3

タイトル P-350:

大腸癌細胞におけるErbB3の核内移行を誘導する因子に関する検討

演者 米澤 真興(日本医科大学消化器内科学)
共同演者 辰口 篤志(日本医科大学消化器内科学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 【目的】受容体型(膜貫通型)チロシンキナーゼであるErbBファミリーは,EGFR,ErbB2,ErbB3,ErbB4の4つが知られている.これらはリガンドと結合して二量体の形成を介して活性化し,癌の増殖,分化,アポトーシス,血管新生等を制御する.近年,癌組織においてErbBファミリーの細胞内ドメインが核内にも局在しているという免疫組織学的な研究報告が散見されるが,そのメカニズムについては不明な点が多い.今回,大腸癌におけるErbB3の核内局在をウエスタンブロットで分析し,その誘導因子について検討した.【方法】4つの大腸癌細胞株を用い,ウェスタンブロットでErbB3の細胞内ドメイン(p80-ErbB3)を解析した.2つの大腸癌細胞株から核内蛋白を抽出し,抗リン酸抗体を用いた免疫沈降によりp80-pErbB3を分析した.さらに,ErbB3のリガンドであるHeregulin(HRG)と,膜蛋白の切断を誘導するとされるProtein kinase C(PKC)の影響を分析した.【成績】各大腸癌細胞株において,それぞれ程度の異なるp80-ErbB3の発現がみられ,その核分画にp80-pErbB3が確認された.HRGはpErbB3の核内移行を亢進させたが,一方でPKCの活性化はpErbB3の核内移行を誘導しなかった.【結論】大腸癌におけるErbB3の切断と核内移行の制御は,PKCの活性化ではなくHRGによるErbB3の活性化が関与している.このメカニズムは,通常のErbB3下流の信号伝達系を介することなく,直接核内に信号を伝達している可能性を示唆する.
索引用語