抄録 |
肝癌Vp4症例の長期生存を得るにはいかなる問題点があるか.術前肝動注化学療法後に肝切除・門脈腫瘍栓摘除を施行し,長期生存(治療開始から7年生存,Cancer free)した肝細胞癌Vp4症例の自検例をモデルとして文献的考察を加えて,その治療における諸問題を検討した.(症例)58歳男性,HBs抗原陽性,Vp4を伴う肝S6を中心とする7cm大の単発の肝細胞癌,他に併存疾患なし,5-FU+CDDPによる肝動注6週間施行後に肝切除・門脈腫瘍栓摘除,術後肝転移に対しTAI及び再肝切除,肺転移に対し肺切除し,cancer freeにて7年生存し,事故死した.(検討事項)(1)門脈本幹の閉塞時にはICG15分値は,真の肝予備能の評価に適するか(幕内基準をあてはめてよいのか).(2)術前肝動注化学療法のmeritとdemerit(合併症等)について.(3)動注化学療法の著効例にも手術をすべきかどうか.(4)放射線治療や新規抗癌剤の併用は有効か.(検討結果)(1)自験例は術前ICG-R15は24.0%であったが,肝切除・門脈腫瘍栓摘除後にICG-R15は17.0%と改善.門脈本幹閉塞例にはアシアロシンチなども併用して慎重に肝予備能の評価を行うべき.(2)自験例は肝動注化学療法を先行することにより,down sizingできた.一方,肝門部の炎症や肝動脈の脆弱化をきたしており,左肝動脈の離断したため術式の変更(右葉切除が部分切除へ)を余儀なくされた.(3)自検例は動注著効後も血小板の低値(5~6万)が続いた.癌の局所コントロールを進める点でも,門脈圧亢進症を回避する点でも,可能なら切除が望ましいと考えた.(4)放射線療法やソラフィニブの併用が有効だった報告あり.動注療法にはIFN併用が有効とされる.いずれも長期生存例は限定されている.IFNやソラフィニブの併用は保険適応の問題もあり今後の課題である. |