セッション情報 ポスター

膵癌3

タイトル P-392:

術前診断に苦慮した分枝膵管に発生した12mm大の膵管内管状腺癌の一切除例

演者 吉田 幸生(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
共同演者 松林 宏行(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科), 金本 秀行(静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科), 佐々木 恵子(静岡県立静岡がんセンター病理診断科), 上坂 克彦(静岡県立静岡がんセンター肝胆膵外科), 小野 裕之(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
抄録 【症例】70代男性,自覚症状なし.便潜血陽性を契機に,近医で横行結腸癌を指摘され当院紹介となった.術前精査目的の造影CTで,膵頭部に境界明瞭で辺縁整の12mm大の類円形腫瘤を認めた.腫瘤は主膵管及び総胆管に接し,周囲膵実質より弱い造影効果を呈した.EUSでは辺縁に低エコー帯を伴う境界明瞭で整で内部均一な12mm大の等エコー腫瘤として描出された.MRI T2強調像では弱い高信号の辺縁の一部に強い高信号が混在する所見であった.PET-CTで膵頭部の腫瘤に一致して軽度のFDG集積を認めた.画像所見より浸潤性膵管癌,転移性膵腫瘍,膵神経内分泌腫瘍,膵腺房細胞癌が鑑別として挙がった.確定診断目的で施行したEUS-FNAでは,異型の弱い腺癌もしくは膵腺房細胞癌を疑う組織所見が確認され,膵頭十二指腸切除及び横行結腸切除を施行した.切除標本の腫瘤割面は境界明瞭で白色調であった.主膵管からゾンデを通すと腫瘤内に交通があり,分枝膵管内に発育した病変であると思われた.組織学的には拡張した分枝膵管内に,核異型と好酸性の細胞質を有する細胞が管状構造主体の増殖像を呈し,免疫染色の結果と合わせて膵管内管状腺癌と診断した.【考察】膵管内管状腺癌(Intraductal tubular carcinoma:ITC)は管状増殖を呈する高異型度の膵管内腫瘍であり,WHO分類では膵管内乳頭管状腫瘍(Intraductal tubulopapillary neoplasm:ITPN)に含まれている.ITCは主膵管内に発育し,主膵管の急激な途絶と上流の拡張を呈する所見が特徴であると報告されているが,本症例は腫瘍が拡張した分枝膵管内を充満するように発育したため主膵管拡張を来さなかったものと推測される.また,拡張した分枝膵管も画像で認識できなかったため,術前診断に苦慮した.画像所見をretrospectiveに顧みるとEUSの所見が分枝膵管内に発育した腫瘤を示唆する所見であったと思われた.
索引用語