セッション情報 |
シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
胃癌発生と腸上皮化生
|
タイトル |
消S5-1:過去40年間の腸上皮化生の推移~組織学的胃炎の検討から
|
演者 |
鎌田 智有(川崎医大・消化管内科) |
共同演者 |
伊藤 公訓(広島大・消化器・代謝内科), 春間 賢(川崎医大・消化管内科) |
抄録 |
背景と目的:H. pylori 感染は表層性胃炎を惹起し、長期の経過をたどり萎縮性胃炎、さらに腸上皮化生粘膜へと導かれ、これを背景に胃癌が発生することが知られている。H. pylori 感染は出生時の環境に左右され、衛生環境の改善に伴い近年その感染率が低下していることも知られている。本研究では過去40年間にわたるH. pylori 感染および組織学的胃炎の推移、特に腸上皮化生の推移を検討した。対象:胃内に潰瘍・癌などの局在性病変を認めない1970年代289例 (男性158例、平均年齢44.9歳)、1990年代787例 (男性430例、平均年齢44.2歳)、2010年代305例 (男性163例、平均年齢53.2歳)を対象とした。方法:内視鏡検査時に胃生検を施行し、Updated Sydney Systemに準じて前庭部および胃体部の腸上皮化生の程度を0~3にスコア化し、過去40年間の推移を検討した (1970, 1990年代: 前庭部小弯2点、胃体中部前後壁各1点、2010年代: 前庭部小弯1点、胃体中部前壁1点)。さらにH. pylori 感染の有無についても同様に比較検討した(1970, 1990年代: ギムザ染色、2010年代: ヒメネス染色)。成績:H. pylori 感染の頻度は1970年代74.7%、1990年代53%、2010年代35.1% (p<0.01, p<0.05)であり、年代とともに有意な感染率の低下を認めた。腸上皮化生の程度は、前庭部では1970年代1.0±0.06、1990年代0.3±0.02、2010年代0.1±0.03 (平均±標準誤差)、胃体部ではそれぞれ0.5±0.05、0.2±0.02、0.04±0.02であり、2010年代では他の年代と比較して有意な軽減を認めた (p<0.01)。さらに、H. pylori 感染者のみを対象とし、腸上皮化生の頻度を年代別に比較検討した。前庭部では1970年代63.9%、1990年代37.4%、2010年代15%、胃体部では1970年代32.4%、1990年代21.3%、2010年代4.7%となり、2010年代ではH. pylori 感染者においても腸上皮化生の頻度は有意に低下した (p<0.01)。結論:この40年間でH. pylori 感染率および腸上皮化生の頻度は有意に低下しており、今後、胃癌発生の頻度は低下することが示唆された。 |
索引用語 |
腸上皮化生, 胃癌 |