抄録 |
(目的)非治癒因子のある初発胃癌に対しては抗癌剤が標準治療であるが、非治癒因子が単独である場合は、複数である場合と比較し予後良好である。今回我々は、非治癒因子が単独である症例に化学療法を導入し、非治癒因子が制御できる場合は手術を行う戦略が有効であるかを検討した。(対象)腹膜播種(P1, CY1)のみを有する進行胃癌43例、および大動脈周囲リンパ節(PALN)転移のみ有する17症例が対象。(方法)腹膜播種症例に対しては腹腔洗浄液腹腔内化学療法と全身化学療法を2クール施行し、腹腔鏡検査を施行し、P0と判断した症例に開腹胃切除を施行した。PALN転移を伴う症例に対しては全身化学療法を施行し、PALNに対して効果が認められた症例17例に対し、D2+PALN郭清を伴う胃切除を施行した。(結果)(2000~2006年)MMC+CDDPを腹腔内投与し、DTX+5-FU+CDDPを全身投与した(Ann Surg Oncol 2011)。25例を登録し、22例に手術を施行。全体のOSは16.7ヶ月であった。(2006~2010年)DTXを腹腔内投与しS-1を内服投与した(Anticancer Res. 2010, J Surg Oncol. 2011)。18例を登録、16例に手術を施行し、全体のOSは24.6ヶ月であった。手術時にCY0, P0とdown stageしたのは、それぞれの試験で56%、78%で、これらの症例の予後は有意に良好であった(p<0.001, MST 31ヶ月)。PALN転移症例(2002~2011)は、NACとして、DTX+CDDP+5-FU 5例、S-1+CDDP 9例、S-1+PTX 3例を施行。NACの効果判定は、CR: PR: SD: PD 4例、10例、3例、0例。治療成績は、1年生存88%、3生67%、5生50%であった。(考察)腹膜播種性胃癌は、化学療法によりCY0, P0となった症例は比較的予後良好であった。PALN転移症例にNACを導入し、治療効果が認められた症例に16番郭清を伴う胃切除を施行した場合の治療成績は比較的良好であった。 |