セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-2:

萎縮進展度と腸上皮化生を主とした若年者胃癌の解析

演者 山崎 琢士(東京慈恵会医大・内視鏡科)
共同演者 加藤 智弘(東京慈恵会医大・内視鏡科), 田尻 久雄(東京慈恵会医大・内視鏡科DELIMITER東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
抄録 (背景)胃癌発生と腸上皮化生は、特に分化型癌の発生において密接な関連があるとされてきた。若年者胃癌の明確な定義は存在しないが、40歳未満の若年胃癌のほとんどが未分化癌であり、進行が早く予後不良である。しかし若年者胃癌の罹患率が低いため、その特徴については十分な知見が得られていない。(目的と研究対象)若年者胃癌の特徴を明らかにするために、萎縮進展度・腸上皮化生の存在を、内視鏡ファイリングステムが当院で導入されて以後現在までの(2008年6月から2012年2月)3年8ヶ月間に当院で内視鏡を施行され、組織学的な最終診断が得られている若年者(0-39歳)胃癌について解析した。また、何歳くらいを境に予後不良な未分化癌から萎縮・腸上皮化生と関連が深いとされる分化型癌が生じてくるのかを検討するために、年齢層を広げて(0-45歳)追加検討した。検討項目は、組織型・存在部位・萎縮の有無と進展度・腸上皮化生の有無・鳥肌胃炎の有無とした。(結果)0-29歳までの胃癌は1例のみ(28歳女性)であった。0-39歳までの胃癌は16例(男:女=6:10)で14例(87.5%)が未分化癌であり、全例女性であった。存在部位は前庭部癌が1例のみで、他は全て体部癌であった。萎縮性胃炎を15例(93.8%)に認め、高度萎縮(open type)も5例(31.3%)に認めた。腸上皮化生は全例で認めなかった。鳥肌胃炎は4例(25%)に認め、いずれも未分化癌であった。さらに40-42歳の胃癌は17例であり、全例未分化癌であった。43-45歳の胃癌は16例で、分化型癌の症例が増し(5例)、31.3%を占めた。推測ではあるが、43-45歳の年齢層が胃癌組織型が変化し得る年齢層であることが示唆された。0-45歳まで全体では、未分化型癌(89.6%)、分化型癌(10.4%)であった。(結論)若年者胃癌(0-39歳)では、萎縮性胃炎を高頻度に認めるものの、腸上皮化生は認めなかった。この一因として若年者胃癌の大半が未分化癌であることが考えられた。
索引用語 若年者胃癌, 委縮性胃炎