抄録 |
【目的】高度進行胃癌(cStage IV)に対する集学的治療における手術療法の有用性、最適な手術時期、切除・郭清範囲を検討する。【対象と方法】当科では2000年以降、高度進行胃癌に対し初回治療としてS-1+CDDP併用化学療法を236例に施行した。その中のcStage IV 148例を対象とし、手術療法の有無による治療成績の比較、手術療法が有用となる時期および切除・郭清範囲を検討した。P, Hの分類は胃癌取扱い規約第12版を用いた。【結果】1. 男性107例、女性41例。年齢中央値61(32~83)歳。手術施行例(手術群)97例、手術非施行例(非手術群)51例、手術率65.5%であった。2. 全148例の遠隔成績は観察期間中央値80.3か月でMST 16.8か月、5年生存割合16.4%であった。3. 手術群は非手術群と比較し、cN2・N3、cP0・CY0、化学療法コース数中央値2回、単独因子でcStage IVとなる症例が有意に多く(p<0.05)、化学療法による奏功例が多い傾向を認めた。4. 手術群のMST 22.5か月、5年生存割合19.6%、非手術群のMSTは12.1か月、5年生存割合2.0%であった(p<0.01)。5. 全148例における多変量解析では手術群(hazard ratio 0.373, p<0.01)、抗腫瘍効果CR・PR(0.307, p<0.01)とStage IV因子数1個(0.359, p<0.05)が独立した予後因子であった。6. 手術群97例における単変量解析ではPS1以下、コース数2コース以下、手術時CY0、cH0、抗腫瘍効果CR,PR、リンパ節郭清D2以上、pN1以下、根治度A,B、組織学的効果1b以上が予後因子であった。7. 手術群97例における多変量解析では根治度A・B(0.109, p<0.01)、リンパ節郭清D2・D3(0.170, p<0.05)、抗腫瘍効果CR・PR(0.221, p<0.05)が独立した予後因子であった。【結語】1. 予後不良なStage IV胃癌においても手術を含む集学的治療により良好な成績が得られた。2. 特に手術症例においては、化学療法奏功例に対しD2以上の郭清を行い治癒切除が得られた場合に、より良好な治療成績が得られる可能性が示唆された。 |