抄録 |
【はじめに】Stage IV 胃癌に対する標準治療は確立されていないが、最近強力な化学療法レジメンの導入によって手術可能症例が増え、その治療成績も向上している。今回我々はStage IV 胃癌に対して(分割)DCS療法をおこなった症例を詳細に検討したので報告する。【対象と方法】当科でDCS療法 (Docetaxel 35mg/m2/D1, 15, CDDP 35mg/m2/D1, 15, S-180mg/m2/D1-14, 1コース4w)を行ったStage IV 胃癌45例(肝転移16例、腹膜播種8例、遠隔リンパ節転移24例、その他7例)とした。男女比30:15、年齢中央値65 (40-78)、PS0: 33, PS1: 12であった。手術は胃切除を含むR0-1切除を原則とした。【結果】DCS療法のサイクル数中央値は2 (1-8)、G3/4の有害事象は20例 (49%)に出現したが、治療関連死を認めなかった。胃切除を29例 (64%)に施行し (R0: 20, R2:9)、14例 (45%)に術後合併症(縫合不全:2、膵液漏:6、乳糜漏:5)を認め、縫合不全の1例は肝不全を併発しPOD67日目に死亡した。全45例のMST 899日、3生率44%であった。単変量解析ではPS, 胃切除の有無、腹膜播種の有無、非治癒因子数が有意な予後規定因子であった。多変量解析では胃切除の有無 (p=0.0077, RR 0.156: 95%信頼区間0.04-0.6)、およびPS (p=0.0016, 95%信頼区間1.97-18.3)が有意な予後規定因子であった。また、胃切除施行群ではR0症例の3生率は77%であり、R2症例 (25%)に比し有意に予後良好であった。特に、BulkyN2症例や大動脈周囲リンパ節転移症例の中でも、肝転移や腹膜播種を有さず、16a2b1内に限局している症例の予後は良好であった (3生率90%)。また、原発巣の組織学的奏功度と予後には相関を認めなかった。【まとめ】Stage IV胃癌において(分割)DCS療法は導入化学療法として有用であり、R0手術が可能であれば長期予後を期待できる。 |