セッション情報 ワークショップ20(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

患者にやさしいERCPの工夫

タイトル 内W20-2:

ERCP時の鎮静に用いるmidazolamの安全性と苦痛軽減効果

演者 南 智之(広島大病院・消化器・代謝内科)
共同演者 佐々木 民人(広島大病院・消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大病院・消化器・代謝内科)
抄録 [目的]ERCPにおけるmidazolamによる鎮静の安全性と苦痛軽減効果を明らかにする.[方法]過去4年間にERCPを行った2687例のうち検査後に患者の苦痛度が評価可能であった2012例を対象に,検査中の鎮静度,患者の苦痛度,鎮静と偶発症の関係について検討した.midazolamは0.06mg/kgを基準初期投与量とし鎮静の状態により適宜追加投与した.[結果]対象の内訳は男性1320例,女性692例で平均64.0歳(14~92),平均検査時間は37.2分であった.midazolamを用いた鎮静に関する偶発症は循環抑制8例(0.40%),呼吸抑制を201例(10.0%)に認めたが, midazolam投与量に有意差はなく,それぞれ1例ずつを除き検査は完遂可能であった.鎮静度に関して体動を指標(体動軽度まで;鎮静良好/体動高度;鎮静不良)とすると,82.9%で良好な鎮静が得られた.鎮静良好群/不良群でmidazolam投与量を比較すると,時間当たりのmidazolam投与量は2.70/2.10μg/kg/minと鎮静良好群で有意に多かった(p<0.01).苦痛度に関しては低苦痛度/高苦痛度に分類すると,68.6%の症例が低苦痛度に抑えられていた.苦痛度別にmidazolam投与量を比較すると,時間当たりのmidazolam投与量は2.84/2.09μg/kg/minと低苦痛度群で有意に多かった(p<0.01).検査偶発症は膵炎48例,出血5例,胆管炎2例,その他5例の計60例(2.98%)で,鎮静度別(鎮静良好/不良)での偶発症頻度は2.7/4.4%と鎮静良好群で有意に少なく(p=0.043),苦痛度別(低苦痛度/高苦痛度)でも2.4/4.3%と低苦痛度群で有意に少なかった(p=0.006).また,鎮静良好で低苦痛度であったものは1215例(60.4%)で偶発症も2.4%と低く(p=0.035),midazolamにより半数以上の例で有効な鎮静効果が得られた.[結論] midazolamはERCP時の鎮静薬として安全に使用できた.半数以上の例で良好な鎮静/苦痛軽減効果が得られたが,時間当たりの投与量や投与方法の見直しにより,より良い鎮静効果が得られる可能性が示唆された.
索引用語 ERCP, 鎮静