セッション情報 ワークショップ20(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

患者にやさしいERCPの工夫

タイトル 内W20-4:

ERCP中のCO2送気は処置後のみならず処置中も患者ストレスを軽減しうる

演者 渡邉 貴之(信州大・消化器内科)
共同演者 村木 崇(信州大・消化器内科), 新倉 則和(信州大・内視鏡センター)
抄録 【目的】ERCP関連手技にCO2送気を用いることで、処置後の腹痛・腹満感・吐き気が軽減されることは以前より報告されている。今回、ERCP関連手技にCO2送気を用いることが処置中も患者ストレスを軽減するかをVital signや薬剤追加投与の面から検討した。【方法】対象は2010年5月から2012年3月に当院にてERCP経験2年以内の術者が施行した289例(通常送気群 n=121、CO2送気群 n=167)である。検討項目は、処置内容、処置中の血圧、脈拍、最大酸素流量、鎮痛鎮静剤追加量である。処置中は5分毎に血圧・脈拍・SpO2を測定し、処置前のVital signは鎮痛鎮静剤投与前のものとした。血圧(脈拍)上昇値は検査中最大収縮期血圧(脈拍)と検査前の収縮期血圧(脈拍)の差とした。鎮痛鎮静剤はミダゾラム 5mgとペンタゾシン 7.5mgを使用しそれぞれの追加量を検討した。【成績】最大酸素流量、鎮痛鎮静剤追加量は2群間に有意な差は認めなかった。Vital signの検討では、処置時間が長期時間になるほど血圧上昇値は高くなる傾向を示し、単位処置時間当たりの血圧上昇値は、通常送気群 4.5 mmHg/10分、CO2送気群 2.8 mmHg/10分とCO2送気群で低かった。特に処置時間に45分以上要した症例(通常送気群 n=32、CO2送気群 n=60)に限ると血圧上昇値は、通常送気群 中央値17.0 mmHgに比してCO2送気群 中央値10.0mmHgと低い傾向にあった(p=0.078)。処置別の検討では、内視鏡的胆道・膵管ドレナージ術を施行した症例での血圧上昇値は通常送気群(n=61) 中央値10 mmHgに対し CO2送気(n=83) 中央値8.0 mmHgと低い傾向にあった(p=0.063)。脈拍上昇値はいずれの検討でも2群間に差を認めなかった。【結論】ERCP関連手技において、処置時間が長時間に及ぶ場合や内視鏡的胆道・膵管ドレナージ術施行例には、CO2送気を用いることで処置中の患者ストレスを軽減し、血圧上昇を抑えられる可能性が示唆された。
索引用語 ERCP, CO2