セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 内S5-3追:

腸上皮化生を伴わない胃癌─当科における胃底腺型胃癌の検討─

演者 松田 充(富山県立中央病院・内科)
共同演者 平松 活志(富山県立中央病院・内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院・内科)
抄録 【背景】胃癌の発生にはH.pylori感染による慢性萎縮性胃炎,腸上皮化生を経た経路が重要視されている.一方,2010年にH.pylori感染のない正常胃底腺粘膜から発生する胃底腺型胃癌という新たな疾患概念が提唱された.【目的】胃底腺型胃癌の内視鏡所見を含めた臨床的特徴を明らかにすること.【方法】当院で経験した胃底腺型胃癌4例の臨床病理学的特徴を検討した.胃底腺型胃癌に関しては免疫組織化学的に主細胞のマーカーであるPepsinogen-Iが陽性で胃底腺への分化が確認された胃癌と定義した.【成績】(表)【考察】全例がH.pylori陰性の高齢者で,萎縮および炎症所見のないU領域に病変を認めた.肉眼型は3例がSMT様の0-IIa,1例が0-IIbを呈し,表面は血管拡張を有する白色調の正常粘膜で被覆され,内視鏡的にはカルチノイドとの鑑別を要した.病理学的には粘膜深層から発生する低異型度分化型癌で,表層は大部分が異型のない腺窩上皮で被覆され,小さいながら全例SM浸潤を認めた.悪性度に関してはp53の発現はなく,Ki-67標識率も低率であった.【結論】胃底腺型胃癌は今後H.pylori感染の減少に伴い増加する可能性があり,正常胃粘膜であっても高齢者の胃上部に白色調で血管拡張を有するSMT様病変を認めた場合には注意が必要と考えられた.
索引用語 胃底腺型胃癌, 低異型度分化型癌