セッション情報 ワークショップ20(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

患者にやさしいERCPの工夫

タイトル 内W20-11:

総胆管結石に対する安全かつ迅速,確実なERCPを目指して-切石困難例も含めて-

演者 土屋 貴愛(東京医大・消化器内科)
共同演者 糸井 隆夫(東京医大・消化器内科), 森安 史典(東京医大・消化器内科)
抄録 【目的】内視鏡的切石術は総胆管結石に対するゴールドスタンダードとなっているが,しばしば1回の処置で終わらないような排石困難例に遭遇する.患者に優しい排石を目標に,迅速かつ成功率向上のため,また偶発症軽減のための工夫を以下に述べる.(EPLBDを除く)【方法】前処置:咽頭麻酔は通常キシロカインビスカスで行われるが,ビスカス状であるが故に不快感,嘔気を惹起することがある.よって当院では小さなカップに入れて凍結させることで苦痛の軽減を図っている.ビスカスと同様の麻酔効果を有し不快感が軽減されることが患者アンケートで得られた. CO2送気:2010年よりCOPD患者以外は全例送気にCO2を用いており,2000例を超える使用経験から,空気にくらべ吸収が速いことで処置後の送気によって生じた腹満感や嘔気を軽減することが可能で,1例もCO2送気に伴う偶発症は認めていない.また術後胃症例で小腸内視鏡を用いてERCPを施行する際は特に有用で,患者の苦痛軽減は当然のことながら,万が一穿孔が起こった場合も早期のfree air消失が期待できる. EST:ブレードの半分が被覆されたタイプのパピロトームを用いる.切開長は結石の大きさによるが中切開程度までとし,必要があれば後述する機械式砕石具(ML)を用いる. 除石手技:安全かつ迅速な処置のため基本的にガイドワイヤー誘導式を用いる.NDSが長い症例でESTだけでは排石が難しい症例には10mm程のEPBDを追加している.スコープ径と同等以上(12mm)の結石の場合には迷わずMLを用いる.積み上げ結石の場合は下部の結石から除石していく.また結石のサイズに関係なく膵内胆管が細く,胆嚢落下結石の可能性がある場合にもバスケット嵌頓予防にMLを用いるべきである. ERCP後膵炎予防:自然脱落型膵管ステントをERCP後膵炎リスク症例に留置しているが,特に本邦で行われたRCTの結果よりESTを施行していても膵管に負荷のかかった症例にも留置を考慮している.【結論】患者にやさしいERCPを目指すには処置具やEBMに熟知し日々より安全性を追求する姿勢が肝要である.
索引用語 総胆管結石, ERCP