セッション情報 ワークショップ20(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

患者にやさしいERCPの工夫

タイトル 内W20-12:

切除不能膵癌に対するcovered self expandable metallic stent留置におけるEST附加の必要性 -北海道内35施設による多施設共同無作為化比較試験-

演者 林 毅(札幌医大・4内科)
共同演者 河上 洋(北海道大大学院・消化器内科学), 小山内 学(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
抄録 【背景】一般に経乳頭的に胆道ステントを留置する場合、ステントが大口径であるほど膵炎の高リスクと考えられ内視鏡的乳頭切開術 (EST) が行われることが多い。一方、膵癌の多くは主膵管閉塞を来していることから膵炎発症は低頻度であり、ESTなし(nonEST)で挿入するという考え方もある。EST付加の必要性に関する臨床研究は少なくいまだcontroversialである。【目的】切除不能膵癌でcovered self expandable metallic stent (c-SEMS) を留置する際のEST付加の必要性について検討する。【方法】2009年12月より北海道内の35施設で多施設共同研究を実施中である(UMIN000004044)。対象はc-SEMS留置を必要とする切除不能膵癌で、WEB上で登録しEST付加の有無を割り付けた。設定症例数はEST vs. nonEST=100例 vs. 100例、使用ステントはWallFlex(partial covered type, 60もしくは80mm)、評価項目は(1)ドレナージ成功率(2)手技時間(3)早期(~30日)合併症発症率(4)膵炎発症率(5)後期(31日~)合併症発症率(6)c-SEMS開存期間(7)生存期間とした。【結果】2012年3月で登録が終了した。現時点で54例 vs. 55例の解析が可能であり(1)100% vs. 100%(2)599.3±356.8 sec. vs. 400.6±182.9 sec.(3)11例(膵炎6, 嘔吐2, 疼痛1, 出血1, 肝膿瘍1)20.4% vs. 10例(膵炎3, 疼痛2, 出血1, 肝膿瘍2, 胆嚢炎2)18.2%(4)11.1% vs. 5.5%(5)1例(出血1)1.9% vs. 4例(出血1, 肝膿瘍1, 胆嚢炎1, 胆管結石1, )7.4%(6)median 12.6月 vs. 7.1月(7)median 7.8月 vs. 6.4月であった。(2)のみに有意差がありEST施行で手技時間の延長がみられた。本会開催時には200例での解析結果を公表予定である。【結論】切除不能膵癌にc-SEMSを留置する場合、ESTは手技成功率向上、合併症予防、開存期間延長、予後延長の作用はなく、手技時間のみ延長させている可能性がある。
索引用語 ステント, 内視鏡的乳頭切開術