セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-4:

分化型胃癌と未分化型胃癌の診断時における腸上皮化生と好中球浸潤の分布

演者 崎谷 康佑(東京大附属病院・消化器内科)
共同演者 平田 喜裕(東京大附属病院・消化器内科), 小池 和彦(東京大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】H.pylori感染に引き続いて生じる好中球浸潤(NI)と腸上皮化生(IM)は胃癌のリスクとして知られる。それらの胃内での分布と、分化型胃癌、未分化胃癌の発見率の関係を調べ、高危険群を設定することを目的とした。【方法】1998-2000年に当院で上部消化管内視鏡検査を施行し、胃炎評価目的に前庭部大弯と体中部大弯から組織生検を行った1395例(平均年齢56.6±14.3歳、男性746人(53.5%))を対象とした。迅速ウレアーゼ試験・胃粘膜培養法・組織鏡検法のいずれか1つでも陽性であった場合H.pylori 感染ありとした。前庭部と体部のIMの有無で患者を3群に層別化した。IM A群:前庭部と体部いずれにもIMがない、IM B群:前庭部のみIMを認める、IM C群:体部にIMを認める。さらに、NIの有無で患者を4群に層別化した。NI A群:前庭部と体部いずれにもNIがない、NI B群:前庭部のみNIを認める、NI C群:前庭部と体部にNIを認める。NI D群:体部のみNIを認める。これらの背景胃粘膜と胃癌発見率の関係を解析した。【成績】1395例中54人(3.8%)が胃癌と診断された。分化型癌が34例、未分化癌が20例であった。年齢・性別・H.pylori感染・NI・IMを含む多変量解析の結果、男性およびIMの層別化が、分化型胃癌発見の独立した危険因子であった。一方、NIの層別化が、未分化型胃癌の独立した危険因子であった。すなわち、IM A群(n=1005)に対するIM B群(n=240)の分化型胃癌のオッズ比は3.49(95% CI; 1.29-9.65)、IM C群(n=150)のオッズ比は8.67(3.57-22.8)であり、NI A群(n=899)に対するNI D群(n=122)の未分化型胃癌のオッズ比は3.66(1.02-12.2)であった。【結論】背景胃粘膜2点生検による腸上皮化生と好中球浸潤の層別化は、胃癌発見の高危険群設定に有用である。体部の腸上皮化生が分化型胃癌の高危険群と考えられる。
索引用語 腸上皮化生, 胃癌