抄録 |
【目的】近年,苦痛の少ない細径内視鏡スコープによる経鼻上部消化管検査が特に検診の現場で急速に広まっている.しかし,画像解像度,明るさ,アングルの操作性などの問題点から,スクリーニング精度が劣る可能性が推測される.今回我々は,上部消化管内視鏡検診者を対象に,胃癌のスクリーニング精度につき,胃癌偽陰性例を中心に検討した. 【方法】2003年から2011年に上部消化管内視鏡検診が行われた21, 653件を対象とした.細径内視鏡検査が施行された群を細径群,通常径内視鏡検査が施行された群を通常径群とし,既報のごとく発見された胃癌のうちで過去3年以内に内視鏡検査がなされている症例を偽陰性例とした.偽陰性例に関しては,1) 見逃し,2) 描出不良,3) 良性と誤診,4) 所見なし,に分類し検討した.【成績】1.検査件数は細径群6, 831件,通常径群14, 822件で,発見された胃癌は合計110例,細径群が16例(発見率0. 23%),通常径群が94例(0. 63%)であった.2. 病理組織型と背景粘膜の検討ではtub1/tub2例ではO-1~O-3粘膜が40. 4%を占めるのに対してpoor/sig例では28. 0%で,分化型癌は萎縮粘膜を背景とする傾向が見られた.3. 胃癌偽陰性例は17例で,偽陰性率は細径群0. 059%,通常径群0. 095%で通常径群で多い傾向にあった.4. 偽陰性例は,穹隆部: 5. 89%, 胃体部: 58. 8%, 胃角部: 11. 8%,幽門前庭部: 23. 5%で胃体部に多い傾向が見られ,肉眼型はIIc: 64. 7%, IIa+IIc: 29. 4%, IIb: 5.9%の順で陥凹型が多かった.直前検査画像の検討から,見逃し17. 6%,描出不良35. 3%,良性と誤診41. 2%,所見なし5. 9%で,細径群では描出不良が75%と多い傾向にあった.偽陰性胃癌の組織型と背景粘膜は,初回発見胃癌と相違は見られなかった.【結論】細径内視鏡胃癌スクリーニングの偽陰性率は通常径内視鏡に比して劣ることはなかった.スコープの種類にかかわらず胃体部の陥凹性病変に注意を払う必要があると考えられた. |