セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 消W24-1:

胃癌におけるPI3K-Akt経路下流シグナル異常活性化に関わる因子に関する検討

演者 須河 恭敬(札幌医大・1内科)
共同演者 山本 博幸(札幌医大・1内科), 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
抄録 【背景】胃癌の分子標的治療につながる分子異常としてIGF1受容体(IGF1R)やマイクロサテライト不安定性(MSI)を明らかにしてきた(Nat Genet 2006, 2009, Cancer Cell 2010, Genome Res 2012など)。ToGA試験の結果、HER2陽性胃癌に対するTrastuzumabの有効性が証明された。PI3K-Akt経路関連因子は同薬剤の耐性に関わると考えられ、治療成績の向上にはこれらの分子異常の把握に基づく真の個別化治療が重要である。
【目的】PI3K-Akt経路に関わるHER2発現、PIK3CA変異、EBV感染の臨床的意義および同経路の活性化との関連を明らかにする。
【方法】外科的切除を施行された深達度T2-4の進行胃癌213例に対して、免疫染色によりHER2発現およびphospho Akt(pAkt)発現、パイロシークエンス法によりexon1を含むPIK3CA変異解析、EBV感染の有無を EBER1のISHにてそれぞれ検討した。
【成績】HER2陽性(IHC 3+)は20例(8.4%)に認め、分化型で有意に多く陽性例を認めた。PIK3CA変異はこれまでに胃癌で報告のない変異を含め20例(8.4%)に認め、MSI陽性と相関し、深達度との関連も示唆された。EBV感染は18例(7.8%)に認め、未分化型で有意に多くみられた。PI3K-Akt経路の活性化の指標であるpAkt発現との関連について、HER2陽性症例では有意にpAkt発現と相関を認めた(p<0.01)。PIK3CA変異、EBV感染ではpAktと有意な相関を認めなかったが、PIK3CA変異例では変異点によりpAkt陽性率は異なっていた (exon1;40%, exon9;56%, exon20;100%)。予後との関連では、pAkt陽性例は有意に予後不良であった(p=0.02)。
【結論】HER2発現とAkt活性化との関連を明らかにした。PIK3CA変異に関してexon1の解析も重要であるとともに、変異点による下流シグナルへの影響の違いが示唆された。現在、さらに複数の因子について検討を加え、例えば、Trastuzumabの効果を予測しうる分子異常に関して興味深い成績を得ている。胃癌の分子標的治療の成績向上、真の個別化治療に向けた複数の分子異常解析の重要性を議論したい。
索引用語 胃癌, HER2