セッション情報 |
シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
胃癌発生と腸上皮化生
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タイトル |
消S5-5:早期分化型胃癌の発癌におけるH.pylori感染の関与:形質発現からの検討
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演者 |
梅垣 英次(大阪医大・2内科) |
共同演者 |
江頭 由太郎(大阪医大・病理学), 樋口 和秀(大阪医大・2内科) |
抄録 |
【はじめに】H.pylori感染は胃癌のリスクファクターの1つであるが、胃癌の病型、組織型、発生部位、癌の形質発現などの各因子がH.pylori感染とどのように関わっているか不明な点も多い。【目的】内視鏡的胃粘膜切除術(EMR)が施行された早期分化型胃癌の病変発生におけるH.pylori感染の関与を臨床的に検討し、胃癌対策としてのH.pylori除菌を考察する。【対象および方法】EMRを施行した早期分化型胃癌患者137症例を胃癌群、消化性潰瘍および胃腫瘍性病変を認めなかった患者154例を対照群とした。病変、患者背景と血清H.pylori抗体価、木村・竹本分類の内視鏡所見による胃粘膜萎縮、粘液組織化学的形質発現、病変周囲の背景粘膜より検討した。【成績】(1) 一般群はH.pylori抗体陽性率57%、胃癌群では80%と胃癌群で有意に高値であり、その傾向は若年層において顕著であった(p<0.05)。(2) 胃癌群の粘液組織学的形質発現の内訳は胃型34%(46/137)、腸型35%(48/137)、混合型31%(43/137)であり、H.pylori感染は各形質間で差を認めなかった。(3) 粘液組織学的形質発現と背景粘膜を病理組織学的に検討すると、胃型癌に比し腸型、混合型癌では腸上皮化生が有意に強かった(各々p<0.01)。背景粘膜のH.pylori感染(H.pylori density)については腸型、混合型癌よりも胃型癌においてH.pylori densityが有意に高かった(p<0.05)。(4) 胃癌群の背景粘膜のH.pylori densityを年齢で比較すると、若年者層(60歳未満)で有意に高値であった(p<0.05)。(5) 腫瘍径の小さい病変では背景粘膜のH.pylori densityが有意に高値であった(p<0.05)。【結論】腸型形質を有する分化型癌はH.pylori感染による胃粘膜萎縮や腸上皮化生との関連性が高く、胃型形質を有する癌ではこれらの変化を伴わず、H.pylori初期段階がその形質発現に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。何れの形質にしろ感染のH.pylori感染による慢性炎症の持続が発癌に関与しており、H.pylori除菌は可及的早期に行うことが望ましいと考えられた。 |
索引用語 |
Helicobacter pylori, 形質発現 |