セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 消W24-2:

当科におけるHER2陽性胃癌に対するトラスツズマブの使用経験

演者 櫻井 淳(兵庫医大・内科(上部消化管科))
共同演者 田中 淳二(兵庫医大・内科(上部消化管科)), 三輪 洋人(兵庫医大・内科(上部消化管科))
抄録 【背景】2011年3月に胃癌に対して抗HER2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブが保険適応となり、HER2過剰発現が確認された切除不能な進行・再発胃癌に対して、実地臨床での使用が可能となった。今回我々は当院で施行した進行・再発胃癌に対するトラスツズマブの使用経験について報告する。【対象】2011年3月以降当院でHER2のスクリーニング検査を行った78例中、HER2陽性例は30例(38.5%)であった。HER2陽性患者のうち14患者16例でトラスツズマブ併用レジメンで化学療法を施行した。【成績】平均年齢は69.0±4.8歳、男性11名、女性3名。切除不能例が10例、再発例が4例、また一次治療として使用されたのが6例、二次治療が8例、三次治療が2例であった。トラスツズマブ併用で化学療法が施行された16例のレジメンはカペシタビン+シスプラチン+トラスツズマブ(XP+Tmab):5例、S-1+シスプラチン+トラスツズマブ(SP+Tmab):4例、パクリタキセル+トラスツズマブ(PTX+Tmab):7例であった。治療効果はXP+Tmab治療群では、効果判定を行った2例のうち1例が変化無し、1例が増大であった。SP+Tmab治療群は、1例が原疾患の悪化により評価前に死亡、残りの3例中2例で腫瘍の縮小を認めた。PTX+Tmab治療群では、効果判定を行った6例中3例で腫瘍の縮小を認めた。副作用はすべての症例で認められたが、Grade3/4の副作用は7/15例(46.7%)であった。トラスツズマブによると考えられる有害事象としてはinfusion reactionを1例、心障害を1例認めた。【結語】今回一次治療でのXP+Tmabをはじめ、SP+Tmab、また二次治療以降でのPTX+Tmabの使用を経験した。当科で現在までトラスツズマブを使用した経験では、重篤な副作用は認めておらず安全に用いられる薬剤であると考えられた。一方、有効性についてはトラスツズマブ初回投与例で良好な結果が得られていたが、使用経験数もまだ十分とは言えず今後検討していく必要がある。
索引用語 トラスツズマブ, 胃癌