セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 外W24-3:

切除可能な進行再発結腸直腸癌に対するBevacizumabを併用した術前化学療法70例の検討

演者 吉岡 裕一郎(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
共同演者 上原 圭介(名古屋大大学院・腫瘍外科学), 梛野 正人(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
抄録 【背景】当科では生存期間の延長を期待して,切除可能な進行再発結腸直腸癌に対して,分子標的薬を併用した術前化学療法を行っている.Bevacizumab(以下BV)はKRAS statusによらず使いやすい分子標的薬であるが,副作用としての創傷治癒遅延作用は周術期の懸念事項である.BV併用術前化学療法について検討した.
【対象】2008年4月から2012年2月で,切除可能な進行再発結腸直腸癌と診断し,術前にBVを併用した化学療法を行い手術できた70例.
【結果】男性55例(79%),女性15例(21%).年齢は中央値63(33~77)歳であった.内訳は局所高度進行直腸癌が23例(33%),直腸癌術後局所再発が18例(26%)と多く,他は遠隔転移で,肝17例(24%),肺5例(7%),傍大動脈リンパ節3例(4%),腹膜3例(4%),腹壁1例(1%)であった.BVと併用した抗癌剤のレジメンはXELOX31例(44%)およびFOLFOX26例(37%)が多かった.Grade3~4の好中球減少を9例(13%)に認めた.またBVに関連すると考えられる有害事象として十二指腸穿孔を1例,CVリザーバーカテーテルの血栓閉塞を1例に認めた.RECISTではCR1例(1%),PR33例(47%),SD35例(50%),PD1例(1%)であった.最終BV投与から手術までの間隔は中央値62(36~155)日であった.病変の部位により術式は異なるが,手術時間は中央値561(121~1552)分,出血量は599(10~7527)mlであった.術後病理所見により,pCRを8例(11%)に認めた.術後合併症で特記すべきこととして,消化管吻合を行った23例のうち縫合不全を4例(17%)に認めた.4例の縫合不全はそれぞれ術後7,13,14,34日目に発症し,うち3例に再手術を行った.なお術後在院死はなかった.現在まで18例(26%)に再発を認めており,再発例のDFIは中央値165日(59~490日)であった.
【結論】切除可能な進行再発結腸直腸癌に対するBVを併用した化学療法は安全に施行できると言えるが,術後合併症では縫合不全の頻度が高くなる可能性が示唆される.生存率への上乗せ効果は今後の検討事項である.
索引用語 bevacizumab, 大腸癌