セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 外W24-4:

大腸癌肝転移に対するベバシツマブを用いたネオアジュバントの効果と安全性―第2相試験の結果

演者 片寄 友(東北大大学院・統合がん治療外科学DELIMITER東北大・肝胆膵外科)
共同演者 中川 圭(東北大大学院・統合がん治療外科学DELIMITER東北大・肝胆膵外科), 海野 倫明(東北大・肝胆膵外科)
抄録 目的:大腸癌肝転移の治療は、同時性肝転移など再発率が高い癌に対して潜在的転移の根絶を目指してネオアジュバントが行われている。しかし、分子標的治療薬を用いたネオアジュバントの報告は少なく安全性を含め不明な点が多い。また、ベバシツマブを用いると、創傷治癒遅延の面から手術までの休薬期間が必要で腫瘍の増大の懸念がある。そこでわれわれは、分子標的治療薬ベバシツマブを用いたネオアジュバントの多施設共同研究(第2 相臨床試験)の結果から、安全性および効果、およびベバシツマブのネオアジュバントとしての評価を検討した。対象および方法:個数10個以下、Child-Pough A などを切除可能と定義し、同時性肝転移を対象とした。原発巣を根治切除後、mFOLFOX6+ベバシズマブ療法(初回および最終コースはmFOLFOX6のみ)を8コース施行後、肝切除をとするプロトコールとした。主要評価項目は転移巣の奏効率、2次評価項目は安全性などとして、2010年11月に登録終了し、主要評価項目の評価が終了した。結果:47例が登録され、1例が血管腫の診断となり除外した。登録後に腸閉塞となり試験薬が投与出来なかった1例と、試験薬と異なる治療した1例の合計3例を除外した44例で奏効率の検討をした。化学療法は35例で完遂(79.5%、35/44)した。効果をRECISTv1.0にて評価すると、CR2例、 PR30例、SD11例、PD2例であり、奏効率(CR+PR)は72.7%であった。切除は40例(切除率90.9%、40/44)に施行され、R0率は95.0%(38/40)であった。有害事象は、Grade 4急性腎不全1例であり、治療が安全に施行できたと考える。また、ベバシツマブ投与後開腹術まで最短6週間のプロトコールであったが、1症例を除き腫瘍増大を認めず、休薬期間中の再増大の懸念は少ないと考える。結語:ベバシツマブを含む治療は、安全に施行可能であり、また休薬期間中の増大の懸念は少なく、ネオアジュバントとして有効な分子標的治療薬と考える。
索引用語 ベバシツマブ, ネオアジュバント