セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 外W24-7:

Cetuximabの有効性の評価と新たなバイオマーカーの探索

演者 井上 由佳(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 硲 彰一(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 岡 正朗(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
抄録 【はじめに】転移性大腸癌の1次治療としてもcetuximab(以下Cmab)が使用可能になった。今回、1・2次治療でCmabを含む加療を行った症例につき新たなバイオマーカーの探索を行った。【対象と方法】A.2010年4月以降にKRAS野生型大腸癌肝転移症例に1次治療でCmabを用いた7例 、B.2008年12月~2009年12月にKRAS野生型大腸癌の2次治療でFOLFIRI+Cmabを投与した60例(FLIER試験)で検討した。いずれも癌遺伝子変異としてminor KRAS、BRAFとPI3Kを、宿主遺伝子多型としてFcGRIIa(H131R)/IIIa(V158F), EGFR(CAリピート)を解析した。【結果】A.転移巣は全例肝臓に限局していた。併用レジメンはXELOX/mFOLFOX6/FOLFIRI=3/3/1だった。奏効率(RR)はCR/PR/SD/PD:0/6/1/0で86%であった。SDの1例はKRAS CD146とPI3K変異を併せ持ち、検索遺伝子が全て野生型症例ではRRが100%だった。また、FcGRIIa遺伝子多型はHH/HR/RR=4/2/1、FcGRIIIa遺伝子多型はFF/FV/VV=4/2/1、EGFR遺伝子CAリピート数は<36/>37=4/3で効果と一定の傾向は認め無かった。B.最良治療効果はCR/PR/SD/PD/NE=1/18/32/8/1でRRは31.7%であった。BRAF変異は3例, PI3K変異は2例, KRAS minor mutationは4例に認め(CD60/CD61/CD146=1/2/1)、これらの症例のRRは0%だった。また、FcGRIIa(H131R)はCR+PR:HH/HR/RR=10/6/3例、SD+PD=HH/HR/RR:22/7/3例、FcGR IIIa(V158F)はCR+PR:FF/FV/VV=15/3/1例、SD+PD:FF/FV/VV=19/11/2で、各遺伝子多型とRRに関連は認めなかった(X²検定)。EGFR遺伝子CAリピート数はCR+PR:<36/>37=5/14、SD+PD:<36/>37=13/19で、RRに関連は認めなかった。【考察】Cmabは高い腫瘍縮小効果から1次治療におけるconversion therapyとしての有用性が示唆された。バイオマーカーとしてKRAS (CD60,61,146), BRAFや PI3K が挙げられnon responderの予測につながると考えられた。また、今回の検討ではFcGRやEGFR遺伝子多型とCmabの効果に関連は認めなかったが、今後生存率との関連についても解析して報告する。
索引用語 cetuximab, バイオマーカー