セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 肝W24-8:

肝細胞癌患者におけるソラフェニブ国内市販後の適正使用推進活動

演者 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科)
共同演者 沖田 極(社会保険下関厚生病院)
抄録 【目的】肝細胞癌患者におけるソラフェニブ(ネクサバール錠)国内市販後の適正使用推進活動につき、投与開始30日以内の死亡例(以下、早期死亡例)の検討を中心に報告する。【方法】早期死亡例につき、報告医へ遡及的詳細調査を行い詳細な臨床情報を収集・検討した。また、2009年12月時点での特定使用成績調査777例のデータを用い、本剤との因果関係を問わず本剤開始後30日以内の死亡が確認されている51例を早期死亡群、対して本剤開始後61日以上の生存が確認されている382例を対照生存群と定義し、両群の患者背景および肝機能検査値を比較検討した。これらの検討は専門家委員会によるレビューが行われた。【成績】早期死亡例の発現割合について、Child-Pugh (C-P)分類B(18.2%; 14/77例)ではA(5.1%; 35/693例)の約4倍であった。患者背景比較では、Stage (TNM分類)、肝外転移の有無、C-P分類・スコア、Performance statusについて早期死亡群で悪い傾向がみられた。肝機能検査値比較では、投与前値がAST 200 IU/L、総ビリルビン3.0 mg/dLを超える症例割合はそれぞれ早期死亡群で著しく高かった。本結果を受け、投与開始1ヵ月間における週1回以上の肝機能検査実施の推奨や、検査値に関する留意点を盛り込んだ提言が臨床現場に情報提供された。その後、早期死亡例の発現は減少し、2012年1月31日まで再増加を認めていない(2012年3月現在)。【結論】肝細胞癌患者へのソラフェニブ投与にあたっては、リスクベネフィット評価に基づいた適正な患者選択、ならびに投与開始早期の肝機能検査値の慎重な観察が必要である。また本報告は、適正使用推進活動が早期死亡例の発現減少に寄与した一例として意義深いものと考える。
索引用語 ソラフェニブ, 肝細胞癌