セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 肝W24-10:

進行肝細胞癌治療におけるソラフェニブの現状と問題点

演者 小笠原 定久(千葉大大学院・腫瘍内科学)
共同演者 金井 文彦(千葉大大学院・腫瘍内科学), 横須賀 收(千葉大大学院・腫瘍内科学)
抄録 【目的】進行肝細胞癌治療におけるソラフェニブの現状と問題点を,当科における治療成績をもとに考察した.【対象と方法】2009年5月から2012年1月までに当科にてソラフェニブを導入した99例のうち,分子標的薬一次療法かつChild-Pugh Aであった75例の臨床病期別の有効性をレトロスペクティブに解析した.【結果】年齢中央値72歳,男/女 62/13,HBV/HCV 8/41,C-P 5/6 47/28,PS 0/1/2 59/12/4,BCLC B/C 36/39,Stage III/IVa/IVb 36/13/26 ,観察期間中央値は5.9Mであった.ソラフェニブ導入日を起算とするTTPは3.0M,MSTは8.6Mであった.脈管侵襲(MVI)を19例(VPのみ12例,VVのみ2例,Bのみ2例,VP+VV 3例)に認め,肝臓外病変(EHM)を30例に認めた.RECISTv1.1による抗腫瘍効果はCR/PR/SD/PD/NE 0/3/49/19/4であった.12週間を超えてSD以上を維持した症例(SD>12)は,12週間維持できなかった症例(SD<=12)より有意にMSTが長かった(SD>12 vs. SD<=12 undefined vs. 5.0M,P<0.0001).脈管侵襲制御期間は1.5M,VP制御期間は1.7Mであった.EHMのない症例においてMVIを認める群は,MVIを認めない群に比べて有意にTTPおよびMSTが短かった(EHM(-)/MVI(-)vs. EHM(-)/MVI(+) MST: 20.2M vs. 7.6M,P=0.0263, TTP: 6.0M vs. 2.3M, P=0.0133).EHMのある症例においてもMVIを認める群は,MVIを認めない群に比べて有意にTTPおよびMSTが短かった(EHM(+)/MVI(-) vs. EHM(+)/MVI(+) MST: 9.7M vs. 3.8M, P=0.0002, TTP: 3.9M vs. 1.1M, P<0.0001).BCLC B(EHM (-)かつMVI (-))症例のうち31例の直前治療がTACEであり,TACEから画像上TACE不応と判断されるまでの期間は2.5M (中央値)であった.これらの症例のソラフェニブ導入日を起算とするTTPは6.0M,MSTは20.2M,初回TACE日を起算とするMSTは52.7Mであった. 【結語】脈管侵襲を有する症例へのソラフェニブの治療効果は限定的である.TACE不応であるBCLC B症例へのソラフェニブ早期導入の有効性が示唆された.
索引用語 肝細胞癌, ソラフェニブ