抄録 |
【背景】胃癌はHelicobacter pylori (H. pylori)感染を背景として発症し、その終末像である萎縮と腸上皮化生はとくに分化型胃癌のリスクファクターであると考えられてきた。分化型胃癌では内視鏡治療後10%程度の異時性胃癌の発症が問題である【目的】早期胃癌背景粘膜萎縮と腸上皮化生から異時再発の予測ができるか検討した。【対象と方法】検討1:早期胃癌の背景粘膜対象:早期胃癌332例を対象とし、背景粘膜の5点生検(前庭部大弯:AG、前庭部小弯:AL, 胃角部小弯:AnL,体中部小弯:CL, 体中部大弯:CG)をupdated Sydney systemによりスコア化した。また年齢性別をマッチした非癌群と比較した。検討2:異時再発における腸上皮化生対象:胃癌ESD施行後異時再発を認めた再発群15例と非再発群53例について術前の組織学的萎縮と腸上皮化生の程度、血清ペプシノゲン(Pep)値(CLEIA)、Trefoil factor 3 (TFF 3)(ELISA kit, Uscn Life Science Inc.)を比較した。さらに除菌後の改善度を比較した。【結果】検討1:分化型癌(n = 282)では未分化型癌 (n = 50)に比較して、AL,AnL,CL,CGの腸上皮化生スコアが有意に高く、未分化型癌ではAG,AnL,CL,CGの好中球浸潤が有意に高かった。非癌群との比較では、炎症は非癌群で高く、分化型癌ではAGの萎縮、腸上皮化生が高かった。 検討2:非再発群と再発群において萎縮、腸上皮化生スコアに有意差はなく、PepI, PepI/II, TFF3すべてにおいて有意差はなかった。初回治療後除菌介入した非再発群(n = 29)と再発群(n = 9)で除菌1年後の組織所見を比較しても、両群で組織所見の改善に差はなかった。【結論】分化型胃癌は萎縮や腸上皮化性の強い粘膜に発生したが、その組織学的および血清学的程度は異時再発の予測因子にはならなかった。 |