セッション情報 ワークショップ24(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌治療における分子標的薬の位置づけ

タイトル 外W24-12:

転移・再発性GIST治療の現状と分子標的治療の限界

演者 石川 卓(新潟大大学院・消化器・一般外科学)
共同演者 神田 達夫(新潟大大学院・消化器・一般外科学), 畠山 勝義(新潟大大学院・消化器・一般外科学)
抄録 【背景・目的】消化管間質腫瘍(GIST)は,c-kit遺伝子の機能獲得型変異による腫瘍化が明らかになったことで,分子標的治療による高い臨床効果に結び付いた疾患である.当科における成績を検討し,転移・再発性GISTに対する分子標的治療の現状について考察する.
【対象・方法】対象は2011年12月まで当科で治療を行った転移・再発性GIST患者.イマチニブ治療を行ったのは82名(男性46名,女性36名)で年齢中央値は64歳,観察期間中央値は46か月.イマチニブ耐性腫瘍に対する二次治療を行ったのは44名(男性30名,女性14名)であった.診療録をもとに有害事象,抗腫瘍効果,無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS),イマチニブ耐性出現後の予後因子を検討した.
【結果】イマチニブ治療では56名(68%)でGrade3以上の副作用を認めた.17名(21%)で有害事象のための入院を要したが,治療関連死はなかった.効果判定はCR 7名,PR 42名,SD 20名,PD 9名であり,奏効率は60%,病勢制御率は84%であった.5年OSは62%,生存中央値(MST)は70か月,PFS中央値は36か月であった.イマチニブ耐性出現後に行われた二次治療は,スニチニブ治療が21名,外科的切除が22名,動脈塞栓療法(TAE)が22名,姑息的イマチニブ継続を含む緩和治療が8名であり,13名が複数種の二次治療を受けていた.耐性出現後の2年OSは44%,MSTは22か月であった.初回耐性治療別にみたPFS中央値は,スニチニブ治療が7か月,外科的切除が8か月,TAEが6か月であった.単独治療のみ行った患者のMSTが17か月であったのに対し,複数種の治療を行った患者のMSTは34か月であった.多変量解析では,外科的切除施行と増悪腫瘍径5.0cm以下が有意な予後良好因子であった.
【結語】転移・再発性GISTに対するイマチニブ治療は高い病勢制御率を示したが,半数は3年で耐性腫瘍が出現した.スニチニブ治療は耐性腫瘍治療の中心であるが,スニチニブ治療単独での疾患制御期間は短く,外科的切除やTAEも視野に入れた集学的治療を行うことが肝要と考える.
索引用語 GIST, 分子標的治療