セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(基礎)

タイトル 消P-2:

肝レチノイド貯蔵欠如マウスにおけるレチノイド代謝と肝発癌

演者 白上 洋平(岐阜大大学院・病態情報解析医学DELIMITER岐阜大・消化器病態学)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大・消化器病態学), 清島 満(岐阜大大学院・病態情報解析医学)
抄録 【目的】レチノイドの抗腫瘍効果は以前より知られており、近年では肝細胞癌に対する合成レチノイドの臨床治験が進められている。慢性肝疾患の病態悪化に伴い肝に貯蔵されたレチノイドは徐々に失われるが、肝発癌における肝レチノイド貯蔵の役割は解明されていない。我々は肝レチノイド貯蔵が欠如したlecithin:retinol acyltransferase(LRAT)ノックアウト(KO)マウスを用い、diethylnitrosamine(DEN)誘発肝発癌モデルにおいて肝レチノイド貯蔵が果たす役割について検討した。LRATは肝において貯蔵型レチノイドであるレチニルエステルの合成を触媒する唯一の酵素であり、そのKOマウスは多量のレチノイドを含有している肝星細胞の脂肪滴を持たず、肝レチノイド貯蔵がほとんど認められない。【方法と成績】15日齢雄性の野生型とLRAT KOマウスにDENを腹腔内注射し、8ヵ月後に認められた肝腫瘍について解析したところ、腫瘍発生率はLRAT KOマウスにおいて有意に低くなっていた。DEN投与直後における解析ではLRAT KOマウス肝においてCyclin D1、Ki67の発現量が減少していた。またレチノイン酸応答遺伝子であるCYP26A1、RARβおよびp21の発現量が増加しており、このことよりLRAT KOマウス肝におけるレチノイドシグナルの亢進が示唆され、その理由としてLRAT欠損によりレチノールからレチノイン酸への変換が相対的に増加していることが考えられた。また肝発癌が抑制された要因の一つとして、発現が増加したp21によりDEN投与直後の細胞増殖が抑えられることが示唆された。さらにLRAT KOマウス肝ではDENの活性化に必要なCYP2E1の蛋白発現量低下、癌イニシエーションに関わるDNA付加体を排除する修復蛋白MGMTの蛋白発現量増加が認められ、DEN誘発肝癌のイニシエーション抑制に寄与していると考えられた。【結論】肝レチノイド貯蔵が欠如しているにもかかわらず、LRAT KOマウスにおいてDEN誘発肝発癌が抑制された。
索引用語 レチノイド, 肝癌