セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-7追:

TFFの腸上皮化生・胃癌組織での発現形態について

演者 藤本 愛(東邦大医療センター大森病院・消化器内科)
共同演者 五十嵐 良典(東邦大医療センター大森病院・消化器内科), 貝瀬 満(虎の門病院・消化器内科)
抄録 【目的】Trefoil factor family(TFF)は粘液分泌細胞で合成、分泌され胃腸粘膜防御や修復を行うムチン関連性蛋白である。胃癌患者の血清TFF3は高値で、進行癌やdiffuse typeの感度も高い。組織では腸上皮化生の杯細胞に強く発現するが、癌部の発現形態は不明である。TFFの胃癌組織における発現形態を調べ胃癌と腸上皮化生の関連を検討する。【方法】外科切除した胃癌組織(早期癌58切片、進行癌264切片)でTFF1、2、3、MUC5AC、MUC2を免疫染色し、癌部と非癌部の発現をスコア化して検討した。【成績】癌部では、TFF1陽性率は82.2%(265/322)でスコアはpap 1.39、tub1 1.14、tub2 1.37、por 0.93、sig 0.8、muc 0.48でありintestinal typeでの発現が多かった。TFF2陽性率は75.0%(241/321)でpap 0.97、tub1 1.06、tub2 0.99、por 0.95、sig 0.48、muc 0とintestinal typeに多かったがTFF1と比較し低スコアであった。TFF3陽性率は56.8%(183/322)でpap 0.5、tub1 0.46、tub2 0.43、por 0.44、sig 2.06、muc 0.61でありsigで高率に発現していた。早期癌、進行癌に分けて検討しても同様の傾向であった。MUC5AC陽性率は85%(51/60)でpap 1.62、tub1 2.15、tub2 1.17、por 1.34、sig 2.26、muc 2.1、MUC2陽性率は35%(21/60)でpap 0.16、tub1 0.74、tub2 0.37、por 0.22、sig 0.76、muc 0.21であった。非癌部ではTFF1は被覆上皮97.8%(312/319)、TFF2は胃底腺96.4%(296/307)、幽門腺98.2%(164/167)、TFF3は杯細胞95.3%(267/280)、MUC5ACは被覆上皮細胞54/56(96.4%)、MUC2は腸上皮化生杯細胞39/53(73.5%)であった。【結語】胃癌の多くは高分化型腺癌であっても胃型形質発現が多く、腸上皮化生は前癌病変とはいえない。腸上皮化生の安定した組織マーカーであるTFF3は、早期癌、進行癌ともにsignet-ring cell carcinomaはで高度陽性なことから杯細胞との関連が示唆され、他の組織型の胃癌と異なる細胞分化を示している可能性があると考えられた。
索引用語 TFF, 胃癌