セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(B型肝炎)

タイトル 消P-12:

慢性HBVキャリアにおける化学・免疫抑制療法後に発症したHBV再活性化肝障害の検討

演者 山崎 大(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
共同演者 姜 貞憲(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 辻 邦彦(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 青木 敬則(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 友成 暁子(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 真口 宏介(手稲渓仁会病院・消化器病センター)
抄録 【背景と目的】HBs抗原(Ag)陽性の慢性HBVキャリア(HBVC)に抗癌剤・免疫抑制剤を投与する際には、HBVが増殖し肝障害が生ずることが知られている。HBV再活性化肝障害の臨床像を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】1999年6月より2011年11月までの期間に、化学・免疫抑制療法施行後のHBV複製亢進による肝障害を認めたHBVCを対象とし、1)患者背景、2)臨床像、3)HBV感染指標、4)臨床経過について検討した。ALT 300U/L 以上かつ PT活性 60% 未満を重症化と定義した。【成績】1)再活性化を認めたのは9例(男4、女5、年齢中央値56歳)であり、原疾患は、血液疾患2、固形癌5、慢性関節リウマチ(RA)2例であった。投与薬剤はPSL4、CPA3例他であり、投与後肝障害発症までの中央値は23.8カ月(1.5-111.4)であった。2)肝障害の中央値は、AST450U/l、ALT443U/l、T.bilirubin 0.8mg/dl、PT活性82.4%であった。ALT 300 IU/ml 以上は6例(66.7%)、重症化はRA(56歳、PSL投与)、卵巣癌(66歳、CBDCA,DTX,EPA)、乳癌(49歳、CPA,EPI)の女性3例(33%)であった。3) HBV genotypeはB3 ( Bj2)、C6例で、PC領域変異(M)6、BCPはM4例であった。HBV DNA中央値は重症化例で6.9(6.6-8.8)LC/mlであり、非重症化例の5.8(4.3-6.9)LC/mlより高かった(p<0.05)。4)全例に核酸アナログを投与し、重症化例ではmPSLとCyclosporin Aも加えた。ALT 300 IU/ml 以上では化学療法を一時中断した。非重症化6例は治療1.5カ月(0.9-6.5)後にALT 30U/l 未満、1.7カ月(1-3.9)後にHBV DNA<2.6LC/mlを示した。一方、重症化2例はそれぞれ治療開始1.3、2.5カ月後に肝機能は正常化、2.4、2.5カ月後にHBV DNA<2.6LC/ml となった。しかしRA例では、3.6カ月後にHBV DNA<2.6LC/mlを示すも、CMV感染・大腸穿孔・腹腔内出血を合併し、4.2ヶ月で肝不全死した。【考察と結語】HBVCにおけるHBV再活性化肝障害は、33%で重篤化し死亡例も存在した。肝障害発症時のHBV DNA高値が重症化に関連する可能性が示唆された。
索引用語 HBV再活性化, HBV DNA