セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-9追:

内視鏡切除した早期胃癌と腸上皮化生:臨床病理学的背景および癌関連蛋白発現との関係

演者 八島 一夫(鳥取大・機能病態内科)
共同演者 武田 洋平(鳥取大・機能病態内科), 村脇 義和(鳥取大・機能病態内科)
抄録 【目的】H. pylori感染による慢性胃炎の持続、胆汁酸刺激などが腸上皮化生を引き起こし、胃癌の発生母地となるとされているが、不明な点も多い。病変による背景粘膜への影響が少ない早期胃癌、特に内視鏡切除された症例で、腸上皮化生と臨床病理学的背景および癌関連蛋白発現との関係を検討することは、腸上皮化生のさらなる胃癌発生への意義を明らかにできる可能性がある。【方法】2007年1月から2009年12月までに当科にて内視鏡切除された早期胃癌104例(男77:女27,平均年齢70.3歳,tub88:pap14:por/sig2,m93:sm11)の内視鏡・病理所見(病変:部位,肉眼型,組織型),患者背景(年齢,性別,飲酒・喫煙歴,既往歴,癌家族歴)を確認し、免疫組織化学染色にて病変部のAID,p53,Mlh1発現を解析した。これら情報と切除標本の非腫瘍部における腸上皮化生,萎縮,慢性炎症程度をupdate Sydney分類で評価(軽度,中等度,高度)し比較した。【結果】免疫組織化学染色にてAID発現,p53過剰発現,Mlh1発現減弱・消失を認めたものは、それぞれ36例(34.6%),35例(33.7%),19例(18.3%)であった。腸上皮化生は全例に認められ(軽度29,中等度57,高度18)、患者背景では男性(p=0.019),喫煙歴(p=0.007)と密接に関連していた。病変部位との関係ではL領域でより軽度(p=0.007)であった。また背景粘膜では慢性炎症程度との関連傾向を認めたが(p=0.058)、萎縮との関係はなかった。腸上皮化生程度と癌部癌関連蛋白発現との関係は認めなかったが、腸上皮化生においてAIDは強発現していた。その他、AID発現と慢性炎症高度(p=0.061)、Mlh1異常と慢性炎症軽度(p=0.043)、P53発現と萎縮中等度以下(p=0.084)、との関連傾向が認められた。【結論】男性,喫煙者,U・M領域の早期胃癌は腸上皮化生が高度であり、これら特徴が腸上皮化生(前癌または傍癌状態)を背景とした発癌リスクである可能性がある。また、AID,Mlh1と慢性炎症との関係も示唆された。今後、腺腫における解析も行う予定である。
索引用語 胃癌, 腸上皮化生