セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(NASH/NAFLD、アルコール性肝障害)1

タイトル 消P-32:

リゾフォスファチジルコリンによる肝細胞アポトーシス機序の検討

演者 柿坂 啓介(岩手医大・消化器・肝臓内科DELIMITERDivision of Gastroenterology & Hepatology,Mayo Clinic,Rochester,Minnesota)
共同演者 滝川 康裕(岩手医大・消化器・肝臓内科), 鈴木 一幸(岩手医大・消化器・肝臓内科), G. J.  Gores(Division of Gastroenterology & Hepatology,Mayo Clinic,Rochester,Minnesota)
抄録 【目的】近年患者数が増加している非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は持続する炎症を背景に慢性肝炎、肝硬変に進行する。NASHにおける炎症の本態は肝細胞の脂肪毒性に代表される傷害による肝細胞死と考えられ、その肝細胞死機序の解明が進められている。基礎的検討ではパルミチン酸に代表される飽和脂肪酸は肝細胞に脂肪毒性を示し、肝細胞アポトーシスを惹起することが報告されている。しかし、飽和脂肪酸が直接毒性を示すのか、代謝産物を介して毒性を示すかは明らかでない。リゾフォスファチジルコリン(LPC)は脂肪酸から合成されるホスファチジルコリンからフォスフォリパーゼA2(PLA2)で合成される。本研究はLPCが肝細胞アポトーシスを惹起するかを検討し、更にその機序を明らかにすることを目的とした。【方法】ヒト肝癌細胞株Huh-7およびヒトまたマウス初代培養肝細胞を用いた。形態学・生化学的にアポトーシスの有無を検討し、アポトーシス機序は定量的RT-PCR、ウェスタンブロットで評価した。【成績】パルミチン酸投与により細胞内LPC濃度は上昇し、PLA2阻害剤の併用で細胞内濃度は低下した。LPCはHuh-7および初代培養肝細胞にアポトーシスを引き起こし、カスパーゼ阻害剤で抑制された。また、ERストレスマーカーの上昇、JNK、c-Junのリン酸化を引き起こし、その結果BH3 only proteinのPUMA発現を亢進させた。さらに、JNK阻害剤によりc-Junのリン酸化、PUMAの発現を抑制し、肝細胞アポトーシスを有意に減少させた。ERストレスマーカーのCHOPをノックダウンしたHuh-7およびPUMAノックアウトマウス由来初代培養肝細胞でLPCによるアポトーシスは有意に減少した。【結論】パルミチン酸により細胞内LPCは上昇し、LPC自体で肝細胞アポトーシスを惹起する。LPCによる肝細胞アポトーシス機序はERストレスマーカーの上昇とJNKによるc-Junのリン酸化、PUMAの上昇を認め、カスパーゼ依存性機序によると考えられる。
索引用語 リゾホスファチジルコリン, 肝細胞アポトーシス