セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 内S5-10:

化生性胃炎における胃癌発生‐発癌リスク、予防、分子機構

演者 吉田 岳市(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 井口 幹崇(和歌山県立医大・2内科), 加藤 順(和歌山県立医大・2内科)
抄録 【目的】腸上皮化生と胃癌発生の間に密接な関連がある事は広く知られているが、腸上皮化生の発癌過程での位置付けとしてpreneoplastic lesionあるいはparaneoplastic lesionとして捉えるかを含めて議論の多い所である。広範な腸上皮化生を有する化生性胃炎(MG)の発癌potential, 発がん予防、発癌機構の安定性について検討したので報告する。【方法】某職域健常中年男性4586人、当院で胃腫瘍に対して初回の内視鏡的切除術を行った391人を対象にMG例を抽出、追跡調査を行う事で胃癌発生率及び内視鏡切除術後の胃腫瘍の再発率を検討した。また、早期胃癌切除後のMG例47例を対象に選択的COX-2阻害薬、etodolac (300mg) 投与による胃癌再発予防が可能かを検討すると共に、腸上皮化生改善効果が認められるかを検討した。さらに、MG例を含め、Helicobacter pylori(HP)関連胃炎の各ステージにおいて胃粘膜由来DNAの メチル化等の分子変化を検討した。【結果】中年健常人男性の胃癌発生率は、HP関連胃炎進展と共に増加し、MG例で最高値である年率1.1%に達した。同時に、MG例での胃腫瘍再発率も高く、早期胃癌切除例では年率6%にも達した。EtodolacはMG例からの胃癌再発を効果的に抑制したが、内視鏡所見、組織所見、血清PG値で判断する限り、腸上皮化生の改善は認められなかった。MGにおけるDNAメチル化はHP起因性胃炎終息と化生性胃炎出現により、各遺伝子promoter領域、反復配列、遺伝子全域の各メチル化レベル共、比較的安定した状態に至る事が示された。【結論】HP関連胃炎の終末像であるMGは高い胃癌発生率、再発率を示す胃癌ハイリスクである。形態学的な腸型形質発現とは別に、高い発癌potentialの大部分はCOX-2により仲介されると考えられた。epigeneticな遺伝子制御の観点からは、HP感染による不安定状態から脱した時期にある事が想定される。
索引用語 H. pylori, 化生性胃炎