セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(自己免疫性肝疾患、薬物性肝障害)

タイトル 消P-48:

当施設における漢方薬の副作用調査から~漢方薬による薬物性肝障害が疑われた2例~

演者 及川 哲郎(北里大東洋医学総合研究所)
共同演者 五野 由佳理(北里大東洋医学総合研究所), 福田 知顕(北里大東洋医学総合研究所), 堀川 朋恵(北里大東洋医学総合研究所), 堀田 広満(北里大東洋医学総合研究所), 森 裕紀子(北里大東洋医学総合研究所), 川鍋 伊晃(北里大東洋医学総合研究所), 石毛 達也(北里大東洋医学総合研究所), 花輪 壽彦(北里大東洋医学総合研究所)
抄録 【目的】近年、漢方薬による薬物性肝障害の報告が増加傾向とされているが、正確な発生頻度に関する報告はほとんどない。そこで今回、主として煎じ薬を処方する漢方専門の当施設における、漢方薬による薬物性肝障害に関する調査を実施した。【方法】2010年8月から2011年3月までの間に当施設を初診した患者のうち、初診時と漢方薬服用開始後(主として服用2~3カ月後)に採血を行った213名を対象とし、肝機能の異常値を中心に副作用の有無を調査した。【成績】213名中25名に、漢方薬服用開始後の採血でデータの異常値を認めた。このうち21名については漢方薬と無関係と考えられたが、残りの4名(1.9%)は漢方薬の副作用の可能性があると判断した。4名の内訳は、肝障害と低カリウム血症がそれぞれ2名(0.9%)であった。以下に、肝障害の症例を供覧する。[症例1]58歳、女性。蕁麻疹を主訴に受診。柴胡桂枝乾姜湯を服用したところ、初診から1週間後の採血でAST 99, ALT 157, γGTP 117と肝障害を認めた。漢方薬を中止したところ、約3週間で肝機能は正常化した。DDW-J 2004ワークショップスコアは4点であった。 [症例2]68歳、男性。湿疹を主訴に受診。黄連解毒湯を服用したところ主訴は改善したが、初診から13週間後の採血でAST52, ALT 68, γGTP 51と肝障害を認めた。いったん漢方薬を中止したのち、原因と思われる生薬である黄ゴンを除いた処方に変更したところ、肝機能は正常化した。DDW-J 2004ワークショップスコアは3点であった。【結論】今回比較的少数例での検討ではあるが、漢方薬による薬物性肝障害を生じた可能性があるケースを見出した。漢方薬にも副作用があるという意識を常に持ち、定期的に採血などを行っていくことが重要である。今後もさらに調査を続けたい。
索引用語 漢方薬, 薬物性肝障害