セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 内S5-11追:

腺管分離法を用いた腸上皮化生腺管、非腸上皮化生腺管、胃癌腺管における癌関連遺伝子のメチル化解析

演者 小飯塚 仁彦(国立国際医療研究センター国府台病院・消化器科)
共同演者 矢田 智之(国立国際医療研究センター国府台病院・消化器科), 菅井 有(岩手医大・分子診断病理学)
抄録 【目的】胃癌症例において癌腺管と周囲粘膜における非腫瘍腺管(非化生腺管及び腸上皮化生腺管)の癌関連遺伝子のメチル化率について解析した。【方法】胃癌41例を用い、癌部、前庭部粘膜、胃体部粘膜から腺管分離法にて腺管を採取した。非癌部である前庭部、胃体部の腺管はalcian blue(AB)で染色後、Muc5AC免疫染色を行い、非癌腺管群をAB陰性の非化生腺管群 (NM)、AB陽性Muc5AC陽性の不完全型腸上皮化生腺管群 (IIM)、AB陽性Muc5AC陰性の完全型腸上皮腺管群 (CIM)の3サンプル群に分類した。各サンプル群をcombined bisulfite restriction analysis法 (COBRA法)を用いて各癌関連遺伝子(MLH1MGMTp16HPP1RUNX3ZFP64DKK1SFRP1RASSF2AE-cadherin )についてメチル化解析を行った。【成績】1) NM群におけるメチル化はZFP64SFPR1で高いメチル化を示したが、その他は10%以下と殆どメチル化を認めなかった。IIM群ではMLH1p16E-cadherinにおいて殆どメチル化を認めず、HPP1RUNX3ZFP64RASSF2ASFRP1で高いメチル化を認めた(20/29;16/28;20/29; 13/28;22/29)。CIM群でも同様な結果を認め、MLH1p16E-cadherinにおいて殆どメチル化を認めず、HPP1RUNX3ZFP64RASSF2ASFRP1で高いメチル化を認めた(22/29;12/29;25/30;14/29;26/30)。IIM群およびCIM群はNM群より有意に高度のメチル化を認めた(p<0.01)。IIM・CIM群のメチル化状態は両群間に差を認めなかった。2)癌腺管と同一症例内のNM群およびIIM・CIM群の比較において癌腺管はNM群より高度のメチル化を示したが、IIM・CIM群との間に差を認めなかった。【結論】癌関連遺伝子のメチル化状態は腸上皮化生腺管、癌腺管に差を認めず、癌関連遺伝子のメチル化は両者に共通の分子異常であることが示唆された。IIM・CIM腺管においてもメチル化状態に差がなく、癌関連遺伝子のメチル化が腸上皮化生発生初期の分子異常であることが推測された。
索引用語 腸上皮化生, メチル化