セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
肝臓(自己免疫性肝疾患、薬物性肝障害)
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タイトル |
消P-50:東日本大震災で緊急輸入されたレボチロキシンナトリウム水和物製剤による薬物性肝障害の一例
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演者 |
小畑 達郎(宇治徳洲会病院・消化器内科) |
共同演者 |
竹本 隆博(宇治徳洲会病院・消化器内科), 竹田 彬一(宇治徳洲会病院・消化器内科) |
抄録 |
【はじめに】薬物性肝障害には薬物の主成分でなく添加物によって惹起される例がある.先の東日本大震災に際し,A製薬の福島県の工場が被災し,レボチロキシンナトリウム水和物製剤「チラージンS錠25・50・100」「チラージンS散0.01%」の供給が不安定化した.厚労省はS社に要請して同社の在ドイツ子会社からレボチロキシンNa水和物錠50μg「S」(以下「S薬」)を緊急輸入し,代替薬として2011年4月前半よりA製薬から供給開始させた.我々はチラージンSから「S薬」に変更後薬物性肝障害をきたした症例を経験したので報告する.【症例】50代女性.38歳時,甲状腺乳頭癌をB病院で切除され,2008年にバセドウ病にて同院で放射線治療を受け,以後チラージンSを処方されていた.2011年5月上旬に「S薬」を処方され,中旬より数日服薬した.当院受診1週間前,尿濃染に気づき,徐々に全身倦怠感と食思不振が増強して5月下旬当院受診.AST/ALT:2391/2875(IU/L),ALP/GGT:1014/134(IU/L),T-Bil./D-Bil:9.64/6.4(mg/dL),PT:71.5%,USで胆道系の拡張を認めず急性肝障害としてそのまま入院.飲酒歴なく肝炎ウイルスマーカー,肝炎を起こしうる肝炎ウイルス以外の微生物マーカーおよび自己免疫性肝疾患を示す血清マーカーはいずれもnegative study.発症1年前から新たに加わった薬物は「S薬」のみだった.入院後直ちに「S薬」のD-LSTを行い,服薬を中止,当院で入手可能だったチラージンSに変更した.1週間経過観察したが,自覚症状および黄疸・肝萎縮傾向の進行を認めるため,第10病日よりMPSL 500mg/日×3日のミニパルス療法を行い,その後ステロイドを漸減し第42病日に退院した.【まとめ】「S薬」はD-LST陽性(S.I.= 2.6点)であり,DDW-Japan2004ワークショップのスコアリング7点だった.添付薬のどの成分が原因薬物かまでは同定していないが,成分が同一でも添加物が異なれば本例のような肝障害がありうる.種々の薬でgeneric製剤への切り替えが日常的となった昨今,注意すべきと考え報告する. |
索引用語 |
薬物性肝障害, 薬剤添加物 |