セッション情報 |
シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
胃癌発生と腸上皮化生
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タイトル |
消S5-12:腸上皮化生を伴う高度萎縮性胃炎に潜在するゲノム異常の次世代シーケンサー解析
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演者 |
清水 孝洋(京都大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
丸澤 宏之(京都大大学院・消化器内科学), 千葉 勉(京都大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】H.pylori感染により生じた萎縮性胃炎を背景として胃癌が高頻度に発生することはよく知られているが、萎縮性胃炎に随伴する腸上皮化生そのものが前癌病変である可能性も示唆されている。本研究では、腸上皮化生を伴った萎縮性胃炎に潜在するゲノム異常の全体像を解析することで、H.pylori感染による慢性胃炎が胃癌発生に果たす役割を明らかにすることを目的とする。【方法】腸上皮化生を伴う高度萎縮性胃炎を背景として発生した胃癌3例を対象として、癌部及び非癌部胃粘膜組織より抽出した核酸を解析検体とし、エクソンキャプチャーを用いた全エクソンの選択的抽出と、次世代シーケンサーを用いた網羅的な大規模ゲノム解析を行った。また、腸上皮化生に発癌と関連した遺伝子異常が存在しているのかどうかを知るために、腸上皮化生を多く含む胃炎粘膜と腸上皮化生をほとんど含まない胃炎粘膜に生じた遺伝子異常について、変異頻度や変異パターンを比較検討した。【結果】胃癌を発生した背景の萎縮性胃炎粘膜には、様々なゲノム異常が潜在していることが分かった。腸上皮化生を伴った高度萎縮性胃炎粘膜に認めた遺伝子変異の多くは、発癌と関連しない、いわゆる”passenger mutation”と想定されたが、癌部と共通する遺伝子変異が個々の胃発癌において平均13箇所存在することが分かり、発癌に関連する”driver mutation”がすでに生じている可能性が示唆された。また、p53遺伝子のdeep sequencingによる変異解析からは、胃前庭部の粘膜における変異頻度が同一症例の胃体上部の粘膜における変異頻度より多かった症例は、8例中3例であり、腸上皮化生を多く含む胃前庭部の萎縮性胃炎粘膜だけでなく、腸上皮化生をほとんど含まない胃体上部の萎縮性胃炎粘膜においても同様にゲノム異常が潜在することが判明した。【結論】腸上皮化生を伴う高度萎縮性胃炎においては、胃炎粘膜そのものに様々なゲノム異常が潜在しており、胃癌の発生母地となっている可能性が示された。 |
索引用語 |
次世代シーケンサー, 萎縮性胃炎 |