セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(腫瘍)3

タイトル 消P-69:

当院でのMPT-TACE後に急速に悪性化した肝細胞癌に対する検討―EPI・MMC-TACE症例と比較して―

演者 新 浩一(福井県済生会病院・内科)
共同演者 朝日向 良朗(福井県済生会病院・内科), 松田 尚登(福井県済生会病院・内科), 真田 拓(福井県済生会病院・内科), 渡邉 弘之(福井県済生会病院・内科), 野ツ俣 和夫(福井県済生会病院・内科), 登谷 大修(福井県済生会病院・内科), 田中 延善(福井県済生会病院・内科), 宮山 士朗(福井県済生会病院・内科)
抄録 【目的】第三世代白金製剤ミリプラチン水和物(以下MPT)は、脂溶性白金製剤として高い腫瘍効果が期待され,2010年1月から保険収載となった.当院では従来から主にEPI・MMC-TACEを施行してきたが,2010年の約1年間はMPT-TACEが中心に施行された.しかし,最近になってMPT-TACE後の再発症例が目立つようになり,さらに一部で急速に肝細胞癌が進展・悪性化し予後不良の経過を辿る症例に遭遇する機会も増えてきた.今回,我々はMPT-TACE後に急速に悪性化した肝細胞癌について,過去のEPI・MMC-TACE症例と比較検討した.【対象・方法】対象はStage0・A・B(バルセロナ分類)の多血性肝細胞癌で,2007年1月から同年12月までにEPI・MMC-TACE(平均1.5回)施行した143例と2010年1月から同年12月までにMPT-TACE(平均1.5回)施行した130例.方法はTACE後の観察期間は18か月に一定とし,StageCへの進展を悪性化した肝細胞癌(PD)と称し,その頻度と特徴について2007年のEPI・MMC-TACE症例と比較検討した.【結果】両群間で背景の肝機能・肝細胞癌進展度などに有意差は認めなかった.PD率はEPI・MMC-TACEで17/143例(11.9%),MPT-TACEで25/130例(19.2%)であった.また死亡例でも各々22/143例(15.4%) v.s.29/130例(22.3%)であり,MPT-TACE例で高率にPDとなり,死亡例も多かった.PD症例に限定した解析では,悪化因子の内訳はEPI・MMC-TACEでM/N/Vp/Vv:12/3/9/3例,MPT-TACEでM/N/Vp/Vv:18/5/13/7例であった.PDまでの期間は各々,平均11.5Mv.s.9.4Mで,死亡例は47.1%v.s.64.0%にみられた.また,画像上乏血化所見を呈したのは各々47.1%v.s.56.0%と約半数ずつを占めた.【考察・結論】肝細胞癌治療で,MPT-TACE例ではEPI・MMC-TACE例に比較し悪性化しやすく,かつ短期間で不幸の転帰を辿り予後不良であった.臨床上,MPT-TACE使用には慎重であるべきと思われた.
索引用語 肝細胞癌, MPT-TACE