セッション情報 |
シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
胃癌発生と腸上皮化生
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タイトル |
消S5-13追:腸上皮化生進展時に誘導されるpseudokinase Trib3によるH.pylori感染に伴う胃癌発生機序の解析
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演者 |
近藤 穣(東北大大学院・消化器病態学) |
共同演者 |
今谷 晃(東北大大学院・消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大大学院・消化器病態学) |
抄録 |
【背景・目的】H.pylori感染によって腸上皮化生が進展する経路で分化型胃癌が生じると想定されている。そして我々は、H.pylori感染により胃の分化を制御するHMGbox遺伝子Sox2の発現が抑制され、腸の分化制御に重要なhomeobox遺伝子Cdx2が発現誘導し腸上皮化生が進展することを明らかにしている。さらに腸上皮化生進展過程と考えられるSox2発現抑制モデルをin vitroで作成し、Microarray解析によりpseudokinase Trib3を同定、ヒト胃癌組織で発現していることを報告している(JDDW 2011)。そこでH.pylori感染によるTrib3の発現への影響を細胞内シグナルも含め検討し、Trib3発現による胃癌発生機序を明らかにすることを目的とした。【方法・結果】H.pyloriをマウス正常胃上皮培養細胞株GSM06およびC57BL/6Jマウスに感染させ、定量RT-PCR法を用いTrib3のmRNA発現を検討したところ、GSM06細胞で27.0±1.96倍、C57BL/6Jマウスで1.43±0.31倍と有意に増強していた。マウスTrib3プロモーター領域に対するルシフェラーゼ発現ベクターを用い転写活性を検討したところ、H.pylori刺激により2.11±0.08倍と有意に転写活性が亢進し、NFkB阻害剤BAY11-7082でTrib3の発現が阻害された。このことより、H.pylori感染によりNFkBシグナルを介してTrib3発現が増強維持することが明らかとなった。またTrib3を強制発現するGSM06細胞(Trib3GSM06)を作成し、球状コロニーアッセイで検討したところ、Trib3強発現により造腫瘍能が亢進していた。さらにH.pylori感染したTrib3GSM06では、癌タンパクであるSHP-2のリン酸化が亢進しており、hummingbird表現型を呈する細胞数が有意に増加していた。【結論】胃における腸上皮化生進展時の、Sox2発現が抑制される過程で誘導されるTrib3は、H.pylori感染によりNFkBシグナルを介し相加的に発現し、このTrib3過剰発現という遺伝子異常が、造腫瘍能獲得のみならず、H.pylori感染によるSHP-2の活性化を助長することで癌化に寄与することが示唆された。 |
索引用語 |
trib3, sox2 |