セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(腫瘍)4

タイトル 消P-77:

肝細胞癌終末期における臨床経過と問題点

演者 岡部 和利(くまもと森都総合病院・外科)
共同演者 別府 透(熊本大大学院・消化器外科学), 富安 真二朗(くまもと森都総合病院・外科), 佐野 收(くまもと森都総合病院・外科), 山中 剛(くまもと森都総合病院・外科), 藤山 重俊(くまもと森都総合病院・肝臓・消化器内科), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)終末期においては門脈圧亢進症に伴う消化管出血や肝性脳症、腹水等の症状により積極的治療継続不能となる場合が多い。今回我々はHCC終末期症例の経過において各症状の出現頻度や対応策について検討を行った。【方法】2007年より2012年1月までに当科で亡くなられたHCC症例147例を対象とし、最終治療から死亡までの終末期間、最終入院期間と終末期における消化管出血、肝性昏睡、腹水穿刺の頻度やsedation、オピオイド使用について検討した。【成績】1.終末期間は中央値106日(3日~930日)、最終入院期間は中央値30日(1日~244日)であった。2.51例(34.7%)に遠隔転移を認めたが転移巣が直接死因となったのは12例(8.2%)のみであった。転移巣の内訳は肺39例、骨16例、リンパ節14例、脳5例、副腎3例であった(重複あり)。3.消化管及び腫瘍関連出血は66例(44.9%)に認め、脳転移では全例に出血をみた。出血から死亡までは中央値2日(1日~64日)で大多数が一両日中に亡くなった。4.食道静脈瘤に対する予防的加療を12例(8.2%)に施行されていたが消化管出血を回避できたのは3例(25%)であった。5.肝性昏睡先行は12例(8.2%)で、症状緩和のため腹水穿刺を24例(16.3%)に行った。6.ほぼ全例に自制困難な倦怠感を認め鎮痛剤や鎮静剤によるsedationを103例(70.1%)に施行し、オピオイド使用は54例(36.7%)であった。【結論】HCC終末期では遠隔転移を有しても肝不全で亡くなる症例が大部分を占め、いかに肝機能を維持出来るかが生存期間延長を左右する。また終末期間は短く状態悪化が急速で最終的には約半数の症例が出血を契機に亡くなられる。よって積極的治療継続中から必要に応じて患者本人や御家族へ十分なインフォームドコンセントを行い意思確認をとることが必要であり、治療に際しては常に現状と予後の把握を怠らず適切なギアチェンジの時期選択を行うべきである。
索引用語 肝細胞癌, 終末期