セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(門脈圧亢進症)

タイトル 消P-78:

高度の血小板減少を合併する小型肝癌における補助治療としての脾摘の有用性

演者 田中 正俊(ヨコクラ病院・消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】肝癌治療では、高度血小板減少症(5万以下)が治療の制限因子となる。われわれは治療継続のために脾摘術を積極的に導入しており、その効果を検証した対象研究が少ないので、プロペンシティースコアを用いた後ろ向きコーホート対象研究で、その意義を検討した。【方法】2002年から2009年で、A病院で肝癌治療目的に脾摘した64症例から、長期生存が期待できるミラノ基準内の32例を選択した。各種因子は、平均年令64才、男16例、女16例、HCV27例、HBV2例、平均腫瘍径2cm、単発24例、多発8例、腫瘍病期I期13例、II期16例、III期3例、平均血小板4.6万、Child-Pugh A17例、B15例であった。また11例では肝癌治療後にIFN治療を導入できた(全例IFN-II aあるいはII b)。これらの各種因子をもちいて、B病院で治療した脾摘の無い肝癌症例からプロペンシティースコアでマッチングした32例を選択した。この64例をもちいて、全生存と無再発生存に寄与する因子をカプランメイヤー法とコックス比例ハザードモデルで解析した。【成績】カプランメイヤー法による全生存に関わる有意の予後因子は脾摘(p=0.034)、腫瘍病期(p=0.017)、アルコール多飲(p=0.025)、IFN治療(p=0.001)で、無再発生存に関わる有意の予後因子は腫瘍病期(p=0.003)、アルコール多飲(p=0.034)、IFN治療(p=0.010)であった。これらの有意の予後因子をコックス比例ハザードモデルで解析すると、単変量解析では脾摘(p=0.041)、腫瘍病期(p=0.026)、アルコール多飲(p=0.029)、IFN治療(p=0.003)で、多変量解析では肝癌治療後のIFN治療導入(p=0.009)がもっとも強い有意の予後因子となった。【結論】高度の血小板減少(5万以下)を合併する肝癌症例でも脾摘術の介入により肝癌患者の予後を改善した。また、治療介入で血小板を増加させ、さらにIFN治療を導入することで、予後がさらに改善することが明らかになった。
索引用語 血小板, 脾摘術