セッション情報 シンポジウム5(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌発生と腸上皮化生

タイトル 消S5-14:

H.pylori起因性胃発癌におけるCagAと腸上皮化生の役割

演者 林 義人(大阪大・消化器内科)
共同演者 辻井 正彦(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【目的】Helicobacter pylori(H.pylori)感染は胃発癌に重要な因子であり,特にH.pyloriが胃粘膜細胞に注入するCagA蛋白は,胃発癌において重要な働きをしている可能性が報告されている。一方、腸上皮化生と胃癌発生との関連も古くから議論されている。本検討では、胃発癌と腸上皮化生におけるCagAの関与を明らかにすることを目的として検討を行った.【方法】胃粘膜上皮由来非腫瘍化培養細胞株RGM-1にCagAを強制発現させた系,ヒト胃癌由来培養細胞株AGSに野生型H.pyloriとCagA欠損H.pyloriを感染させた系、CagAトランスジェニックマウスの系、を用いて、CagAの胃発癌・腸上皮化生に重要な遺伝子発現に及ぼす影響、およびその分子メカニズムを検討した.【結果】RGM-1にCagAを強制発現させた系、AGSにH.pyloriを感染させた系、CagAトランスジェニックマウスの系のいずれにおいても、CagAはc-mycの発現亢進を介し、Polycomb遺伝子EZH2発現亢進、DNA・ヒストンメチル化の亢進、microRNA let-7発現の減少、活性型Ras発現亢進、Erkリン酸化、Ki67発現亢進を惹起した。一方、CagAは神経細胞・腸上皮細胞の幹細胞マーカーmusashi-1の発現を亢進させたが、腸上皮化生のマーカーであるcdx2発現には影響を及ぼさなかった。【考察】CagA蛋白は単独で、エピジェネティックなメカニズムを介し発癌に必要な遺伝子発現の変化やシグナル伝達の異常を惹起させるものの、cdx-2発現は誘導しないことから、腸上皮化生を介さないCagA依存的な胃発癌過程の存在が示唆された。
索引用語 CagA, 腸上皮化生